2月25日金曜日 牛の肝臓、切り落とし山羊の首、白い脳味噌に胃袋

 

  くるみは昨夜、というか今朝方まで起きていたので、しんどくてくたくた寝ていたら、薫が来て「朝ごはんできたよ」と言った。相変わらずジャムつきトスターダとCCL。しかし、最近これが一番朝の体調に合っている気がするから不思議だ。

  外は今日も雨降り。霧雨のようだ。本当は今日、早起きして市場にゆき、混んでいないうちに写真を撮る心算だったのだが。薫も億劫そうだったが、やることを延ばし延ばししていると、時間がなくなって却ってしんどくなりそうなので、やっと重い腰をあげたのだった。

 

  最近、犬の糞が道路に多くて滑りそうだ。薫は「気温が下がったから、犬もお腹を壊したんじゃないか」と言う。途中までいったところで、香辛料屋で取り替えてもらう筈のコロランテ2袋()を家に置き忘れて来たことに気づいた。くるみが走って取りにゆく。

  薫は角の店屋で待っていた。かなり急いで戻って来たつもりだったのに、「遅いから車にはねられたのかと思った」といとも簡単に、人を交通事故にしてしまう。市場は、今日も雨なので空いているかと思ったら反対でかなりの賑わいであった。客が多いのを反映して店の人も威勢が良い。また、品数も多い。昨日、一昨日と探したalmejas(はまぐり)も今日はあちこちの店屋で出している。参るよ。ほんと。

 

  また今日も混んでいる香辛料屋へゆき、長い長いシナモンの棒2本を買い、そのあとにコロランテを取り出して、「これはサフランか」と聞いた。鼻の先の丸いおじさんは、首を前に突き出して、一生懸命説明してくれるが、くるみにわかったのは「pure(純粋)」であることと、パエージャに使うのにはもっと必要であること、これを入れると米が黄色くなることだけであった。結局これが何者であるかはわからぬまま、困った顔をして佇んでいると、おじさんは紙に包んだサフランの花が2~3本入ったもの(表に20ptsとえんぴつ書き)を見せた。あ、そうそう、これ。いくつか、と聞くので、また考えていたら、今度はマッチ箱くらいの大きさのボール紙を台紙にしてセロファンで包んだpaqueteを見せた。2つもらう。釣りもわかりやすいように、昨日の分8ptsを返し、新たに300pts受け取った。最初はここでも慣れない為、怪訝そうな顔をされたが、このところ毎日来るのでおっさんも仲々サービスがよい。

  今日もこの店の息子らしき、父親にそっくりの先の丸い鼻とくりくりとした目玉を持った青年が手伝っていた。スペインの店屋の娘や息子は偉いなあ。よく嫌がらずに働くなあ、と思う。Patataはおやじが気に食わぬので、patata屋では買わぬことにした。人間、愛想悪くて人柄悪いと損するよ。苦虫を噛み潰したところまではいかないが、よく眉間に皺の寄るおじさんの店でpatataを買う。38/kg×1kg。くるみが「ポールニューマンに少し似ていない?」と言ったら、「良すぎるよっ!」と大声で薫が叫んだ。100pts8ptsを出したら、釣りは70ptsなのに、75pts(25pts×3) くれた。「おまけしてくれたのかなあ」

 

  DESPOJO屋の写真を撮る。ここにはまだ買いに来たことがないので、よく見たことがなかったのだが、大きな大きな牛の肝臓、毛がついたままの切り落としヤギの首、得体の知れぬ白いもの、赤いものが吊るされている。ガラスケースの中には白い脳みそやら、ぶよぶよしてレースのようなひだひだがうねっている胃袋(callo)らが所狭しと置かれている。客が結構並んで流行っているところを見ると、まだスペインの家庭料理も廃れていないなという気がする。家庭料理がなくならないうちはDESPOJO屋も安泰であろう。これらのものは近づいてみると、思ったより不気味ではなかった。

  そうしてみると、日本の牛や豚のDESPOJOは一体どこに行ってるんだろうか。スパゲティを買う為にスーパーにゆき、ついでに土産用のvinoと食事用のと3本のSigloを買い込む。レジに並んでいた時、聞いたようなイントロが流れてきたので、あれっ!?と思っていたら、春色の汽車に乗って海に連れて行ってよー松田聖子赤いスイートピーがかかった。へえー、スペインで松田聖子を聞くとは思わなかったね、と2人で驚いた。まさか日本語での歌がこちらで流行るとは思えないから、きっと誰かが個人的に手に入れたものなのだろう。改めて聞いてみても仲々いい歌のような気がする。スペインの歌手は割とハスキーボイスの人が多いからその点で受けたのだろうか。それにしても、日本とスペインが似ているとは前々から思っていたが、歌の感じもよく似ている。双方とも同じようなところがダサイ。まあ歌は言葉が基本になっているから、常に「子音+母音」の発音の日本語と同じくたいていが「子音+母音」で終わるスペイン語と似ているのは当たり前かもしれない。1音符に1つの「子音+母音」を当てはめたような歌が多く間延びしてリズム感がないところなども似ている。薫が言うように、日本もスペインもやはり「世界の田舎者」なのかもしれない。

 

  アパートに戻る途中、パン屋でドーナツ200g買う。昼食はCaldoとスパゲティミートソース。書き忘れたが、ひき肉をいつものTernera屋で買うとき、「28Febrero partir a Japon」と言ったら、昔のアメリカ男優のような肉屋の主人と鼻のつんと上向いた奥さんが「¡partita!」と言って驚いた。もう戻ってこないのか、と何回も聞き、最後には「¡ボン ビカッへ(Bon viaje)!」と言って手を差し出した。握手をして別れを告げたのだった。

 

  話をスパゲティに戻そう。

 

  材料は、ひき肉()200g、玉ねぎ1個、ローレル1枚、ナツメグ少々、塩胡椒、トマト缶大カップ(220ccくらい)、きざみパセリ、おろしチーズ、パスタ250g、バター、オリーブ油、にんにく。

作り方は、フライパンに油とバターを熱し、みじん切り玉ねぎにんにくを入れてよく炒め、そこに牛ひき肉を入れ、よく火を通し、水を加えローレルときざみパセリを入れて数分間煮込む。その後、塩胡椒してトマト缶を加えて煮詰め、好みの加減にしてできあがり、である。Caldoは煮込み材料も食べようとしたが、味がまったく汁に出切っていたのでやめ、フィデオスを入れた。このスープは鶏の首、ハモンの骨、牛骨が入っている為、油がすごく強い。そうした訳で塩加減に非常に苦労したのであった。また、野菜も結構たくさん入っていて甘みが出るので、仲々塩が効きにくかったせいもある。しかし、出来は一応まともで、少し味が濃いかな?というくらいであった。栄養のあるスープだ。

 食後にオレンジ。後片付けをしたら、もう出かける時間になった。絵タイルの額が出来上がってくるのだ。それともう一つはこわれもの(フラジーレ)を入れる(手荷物の)バッグを下見する為。El CortePreciadosを見たが、どちらもコストパフォーマンスよいもの見当たらず。El CorteSamsonite(車付き)Preciadosパイロットのスーツケース(ボックス型)がまあまあの候補。アパートに戻り、薫はパエージャを作り、くるみは手荷物まとめをする。夕食はパエージャ(2回分)と赤vino、食後に桃缶と薫はalmibar漬けりんご。そしてCCL。薫は洗濯に精を出し、くるみは洗い物をする。カレーの具がグツグツ煮えてきた頃(食後にくるみが用意して鍋をかけておいた)、時はすでに2時を回った。ああ、しんど。またあした。

 

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