バルセロナの名店 AGUT 1月31日月曜日

  9:00起床。昨夜、暗闇の中で風呂など入っていたので寝るのか遅くなってしまったが、その割に目覚めがよかった。薫にパンを買いに行ってもらっているうちにくるみはCCLの用意。Tostada melmerada付の朝食を済ませた後、部屋の掃除をする。くるみは床履物の整理。薫は洗い物。風呂の電気の修理におっさんが入ってくるときに備えるため。

  10:30にアパートを出るときにおっさんに故障のことを告げた。何だかわからないがやっていてくれるらしい。まずmetrにて、Urguinaonaに出、Banco de Vizcayaへ。今日は1月の末日なので事務所に2月文を納めに行かねばならない。Vizcayaでは薫が400$両替。レートは1$129ptsと先週の末より上っている。薫が替えているとき、くるみの後ろに2人の男が立っていたが。彼らは心なしかじろじろと見ていたようだったので警戒した。2人ともモロッコ人らしかった。銀行を出て、スーツケースを見るためにEl Corte Inglesにゆく。目当てのランセルはかなり大きく、機内持ち込み手荷物の大きさ制限にひっかかる恐れがあるので、他の候補を探すが、デザインと耐久性の観点から見ても、あまり適当なもの見当たらず。カーテンでは赤レンガ色でよきもの有。1mにつき395ptsで適当な値段。もう一度よく考えて買いに来ることにしよう。土産物類(主に陶器)は種類少なく良いものなし。

 

  二人とも大変お腹がすいたので、急いでAGUTへゆく。まだ時間が早いので客は2割ほどの入り。この間と同じ席につき、同じ女給さんになったが、このおばちゃんはとても投げやりな態度なのである。愛想もないし、誰に対してもそうらしい。Menuを見ながら、くるみはArroz a la cazuelaにすることに決めていたが、薫が迷っていたらおっさんが寄って来て、「paella」がある、と言う。メニューを指差したところにはArroz a la cazuelaとあった。この間向かいのおばさんがpaellaを食べていたのにメニューに書いていないね、と言っていたが、これがそうだったのか。Dos paellacorderoのうち、tipico de la casaの方のcordero lechel asado2つ注文。飲み物はミネラルウォーターを注文したら、最後まで聞かぬうちにおばさんはさっさと行ってしまい、500ml入りミネラルウォーターの瓶をぼん、とテーブルの上に置いたのだった。まもなくパエージャが来た。パエージャは濃い黄色(たぶんターメリック)で塩味強いが、イカと鶏のダシが効いている。米の堅さもまともでムールも2つ以上(というのは、薫は2つ、くるみは3つだったから)載っていて、これで150ptsは安い。薫は「味はまともだし、塩辛いところを除けば旨い」と言いながら、うーんうーん唸りながらかき込んでいた。くるみはもうこれだけですでにお腹いっぱいになってしまった。

IMG_5623.jpg

 °platocordeno lechel asadoは以前見たのと違っていたので、ちょっとがっかりしたが、大きな立体的な骨つき塊肉がごろんと皿の上に乗っている迫力はすごかった。わあーっと叫びながら食べ始める。Asadoというのはただ直火で焼いたものと言う意味だけかと思ったら、これは天火に入れ、野菜やvino、肉汁などをかけながら念入りに焼いた、というような手の込んだ味がした。Segoviaで食べた仔豚の丸焼き(コチニージョ・アサド)の味に似ていた。香辛料はあまり感じられなかった。薫は「旨い旨い」と言って骨にこびりついた肉片までも食べるほどだったが、くるみは途中で急に羊の生前の姿が頭に浮かんだまま、仲々消えぬので困った。腹がいっぱいなせいもあるが、食べ切れない気がしたので、薫に「食べてもいいよ」と言った。しかし、いつもはこういうときすぐさま「いいの?!」と言って皿から奪い取っていく薫なのに、今日に限って「いいよ。お前食べろよ。変だぞ、お前。どうかしたの?」と聞く。くるみは「じゃあいい」と言って、喉のところまでいっぱいになりながら、羊を平らげたのであった。これは、1皿400pts也。材料費及び手間・味を考えると、そんなに高い値段でない気がする。

f:id:dodicidodici:20210725143658p:plain

バルセロナのレストラン AGUT シンプルな玄関

f:id:dodicidodici:20210725143935p:plain

AGUT MENU

f:id:dodicidodici:20210725144116p:plain

AGUTのある路地裏



 

  この店はパエージャが塩辛かったにしろ、何にしろ、どれを食べても一応満足のいく店である。薫の後ろの席に座った男女は、最初アーティチョークの根元か何かを食べていたが、2°には丸い皿の周りに赤いエビを45匹ほどのせて、他に盛り合わせたものと一緒にパリッと焼いたもの(ケチャップのようなトマト色ソースとマヨネーズのようなソースと2種ついてきたのでたぶんParrillada(dos salsas)675ptsだと思う)を食べていた。男の方は我々と同じような肉のかたまりにフライポテトではなくマッシュポテトの付け合わせ、アリオリソースつきを。今日はこの海産物のグリルを食べている人が多かったようだ。かなり腹も膨れてこれで十分かとも思ったが、とどめにcombinado de la casaを。おばちゃんはこのあいだpostreを断ったのを覚えていたのか何も言い出さなかったが、薫が「Combinado de la casa」と言う間も無く「Uno!」と言って立ち去った。先を読まれているようでおかしかった。それともこういう頼み方をする人は結構いるのだろうか。このpostreは小さめのプリン1個、バニラアイス1個にプラムのジャムがたっぷりついたもので、やはりこの間チラと横眼で盗み見したのより意外に小さい気がした。これは3つのって115ptsとお得メニューなのでプリンが小さい。人のはよく見えると言うが、薫は本当に人のを見て「プリンだけのは2倍の大きさだ」とつぶやいた。半分ずつ食べて今日のコースを終える。

 

  この頃にはもう店内は100%満員で、我々の席右手に見える階段を上がった席にも人がいると思ったら、そこは待合室の役目を果たしているようだった。席があくと、おっさんが階段わきの電気のスイッチを操作し、ぱっぱっと階上の照明を点滅させ合図する。すると待っていた人がニコニコ顔で降りて来る、という仕組みである。皆こういう仕組みをよく心得ていて、誰に言われるまでもなく勝手に2階に上がってゆき、席の空くのを待っているようであった。どうりで、この間メニューを手帳に写していたときも次から次へと人が入っていったなり溢れて出て来る人がいないので不思議に思ったわけだ。ここの店では誰もがよく店に来慣れてくつろいでいるらしく、思い思いのものを取って、どんどん片端から平らげてゆく。ほんとに平らげてゆく、という表現がぴったりなほど、皆、気取りなくむしゃむしゃやっている。先ほど書いた後ろの男女などは2°を平らげたあと、男の人は更に山盛りのイカフライを食べ、水500mlを追加し(ビノ750ml,500mlの他に)、その後で二人それぞれパイナップル大縦長2切れを食べようとしていた。たぶんあの後でコーヒーも飲むのじゃないか。外人の人はよく食べると言うが、本当によく食べるものだ。パイナップルはその他にも食べている人がいたが、長さ20cm以上の縦斬りの大きなのが2つも皿に盛られて来て90pts。知っていると得をすることはよくあるものだ。これはとくちんだ。あれもこれも、とこの店に来ると、どれもが旨そうに見え、また実際旨いので、またすぐ訪れたくなってしまう。勘定をしたが、釣りの5ptsが仲々来ないのを待ちかねて席を立つと、おばさんが片手で釣りとレシートをくるみに渡した。書き忘れたが、おばさんがテーブルに勘定書を置きに来たとき、薫はくるみの清書したAGUTのメニューを見せ、「Japanese menu」と言った。おばさんは無愛想な顔にちらっと笑いの筋を走らせ、「Muy bueno」となまった投げやりな口調で言ったのだった。「ああ、Vino飲まないと楽やなあ」と言いながら、Simagoにゆく。

 

  ここは昼休みだというのに営業しており、仲々エライ。でもさすがに客はまばらであったが。奥のカウンターで口中の渇きを癒すため、コーラ2杯注文。久しぶりの炭酸飲料は美味しい。薫はいつものようにここのトイレを使い、店を出てGalerias Preciadosへ入る。ここはカセットテープを豊富に置いており、女店員にすすめてもらったパコ・デ・ルシアのテープと、ライザミネリのキャバレー、安売りのbaden powell(バーデン・パウエル)を購入。家に帰って聞くのが楽しみ。ここは土産物類も鋭くて、我々が買ったvino入れと同じような緑と黄色が主調の焼き物も数多くあり、その他にトレドの白に葉っぱの模様が紺で入ったもの、白地にピンクや緑で華やかに模様をつけたものなどいろいろある。皿もけっこうまともなものを置いているようだ。しばらく、剣持さんに???(読めない)とか言いながら見たが決まらず。最後まで決まらなかったらここで買おう。時間がないので、metroFに乗りモンタネールへ。おっと、書き忘れたが、4時過ぎ手荷物の大きさ(機内持ち込み可能)を聞きにIBERIA航空へ行った。

 

  英語が仲々理解されなかったが、やっとわかってもらえると、PIAだと聞いたおっさんは「No problem」を連発し、PIAに乗る人はこんなに大きい荷物(と手を広げてみせて)を持って乗る人がいる。ラジカセを持って乗る人もいるらしい。ついには「animals!」もと言い出す始末で、これには我々ほか周りの人も大笑いしたのだった。まさか動物を乗せる人もおるまいが。まったくの嘘だと言い切れぬところがPIAらしいところだ。この間のおっさんも変わっていたが、このおっさんも随分変わっている。スペインってこういうの得意やなあ。モンタネール駅で降りたところより続きを書く。事務所のブザーを押すと、「ヴァレ!」のお姉さんが出て来て、我々を部屋に待たせて先に領収書を持って来たので2月分20000ptsを渡す。これで一件落着。歩いてアパートに戻った。

 

  アパート受付ではひげのお兄ちゃんが例の可愛い女の人とまた喋っており、そばには子供がいた。薫が「あの人(ジョルディの)奥さんなんじゃないか」と言った。夕食は菜っ葉の始末に、ソーセージ入り中華風炒め物をし、その後ウエボデフラメンカを作るつもりだったが、後者は省略した。炒め物とパン・ビノで夕食。調理をする最中から買って来たカセットをかけてみたが、期待のバーデンパウエルは音悪くかなり地味。パコデルシアはクラシック芸術風でいまいち物足りず。とりのライザミネリのキャバレーは最も酷く、当のライザミネリは1巻中2回ほどしか出てこない。あとは、男の人の歌と楽器の伴奏、会話だけである。最初は笑いながら聴いていたが、次第に腹が立ってきて明日返品しにいくことにした。800ptsも出したのにあんまりだ。パコデルシアはやはりテクニックが鋭いので慣れるとよいだろうが。このキャバレーだけは「ライザミネリ」と銘打ってあるだけにインチキなのは許せない。

この後、薫はパスタの本を訳しにかかっている。おそらくあと1時間ののちには消燈の予定。今日も長い日記が終わった。