バルセロナ ロゼのシャンパンのイケる立ち飲み酒屋 12月27日 月曜

 夜中の3時過ぎ、目を覚ましたら、何処かでカサカサという音がする。窓のそとでしている様だが気になるので、薫を起こし

調べてもらう。硝子戸の向こうを透かし見た感じでは何物もいず、不審に思いながらもそのまま寝た。

  このあとふたりともなかなか寝付かれなった為、9時の目覚ましで起きられず、10時頃やっと布団から這い出た。

 

  今日はけっこう店も開いているようで明け方からガチャガチャと瓶の触れ合う音がしきりにしていたのをみると、隣りのシャンパン屋もやっていそうだ。

  10時半頃宿を出て昨夜行った洒落たBARにゆく。外から覗いた様子では客は居ず、サンドウィッチがどっさり作られているのだけが見えたが、思い切って入る。客ひとりボカディージョを食べており、マスターはサンドウィッチの耳を切り落としているところ。このサンドウィッチは昨日の残りのサラダを利用したものらしく、今朝はまた新しいサラダが作られていた。

レンジに掛かったふたつの鍋からは何か分からぬが白い湯気がたくさん出ていた。

  CAFE CON LECHE、ふたつ注文。サンドウィッチは110pesetasというのでやめて昨日と

同じフランクフルト・ボカディージョにする。珈琲は見た目も実際もなかなかイケる。

店の人達のシャツは後ろから見ても凝っていて、肩幅広い外人の体格に合わせてか、Vの字形

のはぎになっている(4枚はぎ)のがもの珍しい。丈夫そうで、これがデザインも兼ねている。朝見ると、マスターは黒、2人の従業員は紺の肩章の色だった。このマスターは実に楽しげにサンドウィッチの耳を切り落とし、真半分に切っている。包丁もよく切れるためかリズムに乗って、崩れることなくすぱっと切れている。右手にはパンの耳が山のように積もっている。

他の客と話しをし、我々の前に来てニコッとしたが、言葉が通じないと思ってか、何も言わない。薫が彼のシャツを英語で褒めたが、何も分かっていないようで残念だった。珈琲は少し高めで40pesetas。

 

  宿に戻り、マタスのおっさんに新聞を見せてくれと頼む。おっさんは昨日の新聞を持って来て、自分が赤や青で印を付けたところを指し、説明してくれた。4件ほどあった、この間

メモしたのを見せ、電話連絡してもらうことにする。16000pesetas、一部屋、バストイレ付き、家具あり。夕刻四時半に現地で落ち合うことになり、別の候補も探す。そこは中心から少し外れるが、月10000pesetas、食堂もついている家だったが、12ヶ月以上でないと貸せないというので、諦める。

 

  四時半までずいぶん時間があるため、他もまわりたいと思い、新聞を借りてみたが、おっさんはかなりシビアに見ていることが分かった。見つからぬので、外をぶらぶらすることにした。

 

  そう言えば、この間会ったスイス人の女の子にまた出会した。彼女は水色に紺の絞りのような大胆な上っ張りを着て、紺のスカーフを巻いていたが、それがなかなかイマドキで似合っていた。インド土産らしい。疑問になっていた、キワノカデラについて再度聞くと、それは彼女の知っている日本女子の名前であった。なあーんだ、食べ物かと思った。

彼女らはマタスのおっさんにスイス銀行の場所を調べてもらっている風だったが、おっさんが厚い電話帳を二、三冊繰っていても、別に悪びれた様子もなく、任せ切っていた。おっさんはこの時フランス語で彼女らと意外に流暢に聞こえる会話をしていた。

 

  マタスの通りの電気屋街で、エスプレッソメーカーとポット(水筒)を見て回った。

カップ用で425pesetasが相場のようだ。水筒はイギリスのARADIN製のが550〜575pesetas位。アパートメントの外観だけでも見ておこうと、教えてもらった番地の方に向かった。あっけなく見つかった。BARCELONA TERMINOの真前を垂直に走る道路の、ほとんど駅に近い角のところだった。2、3同じような建物が並んでおり、どれも新しくはない。

ここで気づいたのだが、NUEVOとは、新しい建物という意味ではなく、新しく改装したのも含めてのことらしい。外側のドアから中を覗き見た限りでは、壁が剥がれ落ち、きれいに保たれているとは思えなかった。

 

  ずっと道を下って行ったところの細長い公園にゆき、腰を下ろした。今日はホリデーなのか、たくさんの大人や子供が遊び、また日向ぼっこをしていた。例の鉄球ぶつけゲームをやっている人達の周りには多くの見物人がいた。

 途中の店屋でオレンジやオリーブを買おうとしたが、一軒は問屋で小売しないし、もう一軒

は1キロ単位だったので、諦めた。定住していれば、まとめ買いもできるのだが。

 

  また、マタス隣りのシャンパン屋にて、赤いフランクフルトとハンバーグのボカディージョをふたつづつ、ROSADO(ロゼのシャンパン)を一本買い込み、部屋にて食す。ROSADOはあくまで冷たく、ボカディージョはボリュームあり、旨し。4時半の約束まで、薫は風呂へ

くるみは日記書きに精を出す。出来れば、もう2、3件物件を見て部屋を決めたいものだ。

 

  4時15分頃まで休み、約束の場所に向かう。居合わせた掃除のおばさんに聞いたら、目的地はもっと先の別の場所であった。お巡りさんや道端の人に聞きながら駆けつけると、ちょうど不動産屋のSenor Bermejoも到着したところであった。握手を交わし、この真新しそうに見えるビルの横手からアパートメント内に入る。部屋は四つ空いていた。ひとつを見せてもらうと、寝室、食堂兼キッチン、バスルームの三つに分かれている。寝室にはタンスと簡単なベッドふたつがポンポンと並べられ、マットは新しくビニールを被ったままだが、毛布シーツはなく、ベッドカバーもあり合わせの布と毛糸で作った粗末なものだった。バスは真新しく、シャワーも付け替えられていてよいが、ビニールのカーテンは自分でつけねばならぬとの事。台所は観音開きの中に収まっているもので、全てエレクトリコ。電化機材。

使い勝手があまり良くなさそうな為、見合わせて、もう二、三物件を見せてもらうよう、頼んだ。

ここは月16000pesetasで、契約時には16000pesetasの契約金及び32000pesetasの

保証金が追加され、64000pesetasとなる。契約金は戻らず、保証金は2ヶ月過ぎた後、我々の手に戻ってくる。2ヶ月目からは月々16000pesetasだけ支払えばよいとの事。

マタスのおっさん曰く、保証金、その他契約金は妥当であるらしい。

明日さらにふたつトライすることを話し、食事に出た。

  疲れたのでRUZAFAにて定食を食べる。Navidad(クリスマス)も終わり、店内は客少なし。パンも心なしか昨日の残りのパンのようだ。相変わらず、テレビではニュースの後、ドラマがかかり、客がいない静かな雰囲気と、menuを頼めばデザートまで出て700pesetasポッキリという金勘定の楽チンさから、とても寛いだ気分になる。

  薫はEnsalado Variados,くるみはSopa de fideos,そのあとmerluza romana,sardinas a la plancha,あんず缶、りんご一個にvinoとcervezaを頼む。サラダは相変わらず大胆なハッパの盛り付けであり、sopaは微温し。パスタの柔らかさからすると、昨日の残りかもしれない。

いわしは14〜15センチのものが6匹並んで出て来たので、メルルーサのフライと半分づつ取り替える。

デザートはあんずの干したのを熨して板状にしたようなものが出てき、店員にチーズか?と尋ねると、メニューを持って来てチーズの項を指し、もっと高いことを示した。つまり、高いのだから、定食メニューのpostreで出す訳がない、と言うことか。いつものようにティップを払わず、700pesetasをきっちり払って表に出た。

 

  今日はなんだかとても疲れたので、休もうかと思ったが、明日別の物件を見にゆく為、昼間買った新聞で適当なのに印をつける作業をすることにした。

  相変わらず、ここの電灯は暗く、洗面所の上についている明かりでもって読むのだが、なかなか眼が疲れる。暖房もまるでないし、椅子の上に乗っかり背中を丸めていると、薫が、オームのようだな、と言った。仕方ないよ、MATASの宿もいいのだが、電気の暗いのと、寒いのだけは困る。最近、贅沢になっているせいかなあ、そんなことないけどなあ。くるみが大体

見終え、寝る頃にはすでに薫は夢の中。それでも眼鏡はかけたままで、くるみに気兼ねしているつもりらしい。くるみが床に入ると、さも今まで起きていた風に、”あ〜、寝るのか”と

寝惚け声で寝言のように云った。まったくう〜。おやすみ。