12月28日火曜 バルセロナから今夜ジェノヴァへ

   少し早起きし、と云っても9時だが、荷物をまとめて階下に降りる。今夜GENOVAに発つことと、そのため荷物を置かせて欲しいことを伝えた。宿賃の精算をした。

マタスのおっさんはいつになく寝巻き姿、寝惚け声で、宿賃6日分と云ったが、風呂代100pesetas取るのを躊躇っている風だった。こちらから申し出て、3,700pesetas支払う。

荷物を置かせてもらう時、打ち合わせ通り、薫が200pesetas渡そうとしたが、おっさんは、

good peopleだから要らない、としばらく拒んでいたが、なおも薫が手渡そうとすると、全くもう、と言う感じで笑いながら受け取ったのであった。この波に乗じて、昨夜リストアップしたところに電話をお願いする。ふたつともまだ時間が早いためか繋がらず。

仕方ないので、Plaza Lessepsの物件を先に見、その後でチャレンジする事にした。

Sr,Bermejoに教えてもらった事務所に出掛ける。本当は直接行きたかったのだが、電話するのが難しく、事務所に向かった。

  Plaza CatalunaからFという郊外行き列車に乗り、BONANOVAで下車。これはマタスのおっさんに教えてもらったのだが、ひとつ行き過ぎだったため、引き返す。

 

  この辺は広い街路が通り、街並みも整然としてオフィスや高級アパートが多いところである。緑も適当に配され、なかなか感じがよい。中心から少し離れるので、随分と田舎なのだと思っていたが、とんでもなく新市街地であった。

  少し道沿いに歩き、坂道を上がったところがofficinaのある場所である。垣間見られる

ショーウィンドウもセンス良く、歩く人も心なしか贅沢そうな人々が多いようだ。番地を探しながら歩いてゆくと、Bermejoのおっさんに出会した。おっさんはこれからcitioに出掛けるというので、物件を見に来たことを説明し、オフィスのおんなの子の案内で部屋に通された。

  手入れの行き届いた、古いが小綺麗なビルの一階にオフィスはあり、書類等きちんと区分けされ整理されているのを見て、少し安心した。おっさんが出て行った後は、ふたりだけで切り盛りしているらしく、英語をまったく解さぬので大変ながら、やっとなんとか昼休みまでに部屋を見る手筈を整えてもらう。バスで行くところを歩いて目的地に向かう。

  高速道路が複雑に入り組んでいる道沿いをまっすぐ行くと、以前来たことがある場所を通った。

  薫が気付いたのだが、ここはグエル公園の近くなのであった。道路脇には高層ビルが立ち並び、車もビュンビュン走っているが、歩いているひとなどに余り胡散臭そうな感じがないのがよい。金持ちそうなおばさんに道を聞き、Camelia Apartomentoにたどり着く。ここは

旅行者のためのアパートらしく、ホテルのように受付があり、鍵の受け渡しをしている。

受付の愛想のないお兄ちゃんに、書いてもらった紙切れを見せると一階の部屋に案内された。

  ホテル風の細長い、カーペットを敷き詰めた廊下をゆくと、左手にバスルームがあり、奥が一間で寝室兼食堂兼台所になっている。寝室にはソファ風ベッドがふたつと壁際にソファ。

タバコの焼け焦げの沢山ついた簡単な机がひとつ。食堂とは竹簾で仕切られており、小さめの

テーブル1つ椅子2つ。台所は例のコンパクトタイプであった。前のより部屋としては狭いが、コンパクトで使いよさそうなのが気に入った。バスルームのカーテンも付いており、毛布、暖房もある。照明は食堂の全体照明の他、部分照明も備えられている。17000pesetas。

 考えることにしてお兄ちゃんと別れる。

 

  値段、環境はまずまず、部屋は狭いが、まあ2人で住むのにはちょうど良いかもしれない。

受付の兄ちゃん他、一緒にいた住人らしき男の感じはあまり良くないと、くるみは言ったが、そんなことはないと、薫に打ち消された。たまたま道を歩いて来た老年の2人連れに安くてよい

レストランは聞くと、ちょうど横にあったBar Restaurantを勧められ、続いて入る。

 

  ここは学生風の兄ちゃん、姐ちゃんふたりで給仕をしている店で比較的感じがよい。メニューがないので、紙に出来るものを書いて持って来てくれた。客もまともそうな人多し。

 薫はsopa de fidios y verduras,polloくるみは、maccarones,bistecを注文。cerveza(

ビール)2本。sopaは思ったよりボリュームあり、旨し。マカロニはトマト味がきつくなく、挽肉もよくほぐれていないが、何故か味にコクがあると思ったら、太っちょ肉のきざんだのが

入れてあるのだった。Segundoは薫が勝り、polloはよく焼けており、旨そう。bistecもよいが。ポテトフライにも適当に塩が効いており、なかなかと見た。デザートにflan(プリン)を奮発して、70pesetas。

 

  宿に帰り、マタスのおっさんに相談。10分ほど待ってたら、おっさんは坊主と一緒に自転車を持って、ふうふう言いながら上がって来た。ひとついいのを見つけたと云うと、それは良かったと云ったが、それでも最後にもうひとつだけチャレンジしたいので、」電話してくれないかと頼むと、訝しがりながらも電話してくれた。ふたつとも通じず。

  おっさんは草臥れ、我々も決め時なので、Cameliaに決めた。家賃その他話すと、問題ないと言い、電話より直接行ってdepositを払った方がよいと云うことなので、我々もすぐさま出掛けることにした。

 

  Barcelona terminoより乗り換えて、Plaza Lessepsにゆき、徒歩にてオフィスへ。おっさんは戻っておらず、大黒柱となって働いている女の子に色々質問したのち、契約となった。家賃月17000pesetas、契約金5000pesetas、保証金10000pesetas、この他光熱費月々2000pesetas、維持費1000pesetas。2ヶ月目からは17000+2000+1000=20000pesetasとなる勘定。見せてもらった部屋の風呂場の電気が壊れていたことと、

見せてもらった部屋でなく、Entrosueroの部屋になる(電話がついていないので)と云うことで、しばらく話しがごたつき、MATASのおっさんに電話して通訳してもらい、やっと話しが

まとまった。15000pesetasをデポジットとして支払い、31日4時にまた来訪して本契約することを約束してオフィスを出た。

 

  手間取ったので、もう6時前になっていた。途中の店屋でオレンジを買い、駅に急ぐ。

Passeig de Graciaに着き、切符をもらおうとすると、19時の列車しかなく、terminoより出ると云う。

確かに、Thomas Cookの時刻表には書いてあったんだぞ、と薫がぼやきながら早足になる。

時間がないので、シャンパン屋のボカディージョが買えない。駅横の酔っ払い臭いBarで

ボカディージョ4つ、駅のBarでドーナツ4つ買う。飲み物は売店ペプシコーラひと缶のみ。

  ここでたどたどしい日本語を使うおっさん青年みたいな男に”ナニがイイですか。。?”

と声を掛けられた。背の高い痩せぼしの男だ。これがもしかして例のあれか。。?先日女の子ふたりから聞いた男の様子と一致する。無視してやり過ごした。列車に乗り込んだあとも彼は

ホームをうろうろしていたのを見ると、きっとそうに違いない。有名なリカルド君である。背あくまで高く、痩せて細く、黒髪、鼻の骨高く、年の判らぬ異様な顔つき。きちんと黒いジャケットを着ているも訳ありげに見えた。

 この列車は結構混んでおり、おまけにGENOVAへダイレクトではない。もそもそボカディージョをかじり、オレンジを食べて夕食とした。

フランス側の国境駅、cerbereには夜10時頃到着。パスポートに判子も押してもらえぬほど簡単なチェックがあった。しかし、くるみの後ろの、大きな荷物を抱えた黒人や、風態の変わった男は呼び止められ、別にチェックを受けていた。

 待っていた列車(マルセイユ行き)に乗り込み、1時間半ほど待ち合わせたあと出発。

  一等車は思いの外、空いておりコンパートメントを我々ふたりで陣取ることができた。

あまり寝心地よいとはいえないが、暖房も効いているし、坐って眠るよりはまあいいか。消灯