11月5日 パトラスに着く。晴れ後くもり

  目覚めたのは6:30頃だった。2等席の人は、デッキに出払っているらしく、空席が目立つ。私たちもデッキに出てみた。今日も天気がいい。

 

  ちょうど、ギリシャの島の一端に着いたところで緑色の山が島を形づくっていた。木々は日本のそれよりも低いんではないかと薫が言った。陽ざしがきつい。

  デッキのベンチの上や、プール(今は使っていないので網がはってある)サイドに寝袋ごといもむしのように転がっているバックパッカーたちがたくさんいた。薫はおもしろがって写真を撮った。皆夜風を避けるように工夫しているらしく、劉君も上のデッキに上がる階段下の狭い場所にバックで風をよけて寝たという。みんな強いなあ。2等席のシートは日本の船なんかに比べるとはるかに座り心地がよく、柔らかいが、私はあまり熟睡できなかった。クーラーがきいていたせいか、お腹が冷えて痛い。

 

 

  トイレで洗顔の後、チーズサンドと残りのミルク、りんごの朝食。TERESAに教えてもらって買ったチーズは風味が落ちて、味がなくなっていた。また、甲板に戻ると、劉君は別の中国人青年と話をしているところだった。彼はシンガーポールから来たという。よろしくと握手した。理恵ちゃんがいたので、隣に座って話をしていたら、ドイツ人が5〜6人来て座った。ひとりおばさんが座れず、私の隣に仰向けになって寝ていた青年を持っていた杖で起こして、席を譲らせた。ここでもまた、ドイツの女の人は強いんだなあと思う。昼は船内で昨夜買ったスパークリングワイン(ただの白ワインと間違えて買った)を開け、劉君と乾盃し、食事した。瓶詰めの酢漬け野菜は美味しかった。劉君の持っていたマーマレードの瓶のラベルに書いてあるオレンジが真っ赤な色に塗ってあるのはおもしろかった。

 

 

  港に着くまでかなり長く、時々眠って過ごした。5:00前になると、船員がやってきて船内を清掃するので出てくれという。もう船が着くのかなあとみんな首をかしげながら、ともかくホールに出る。あちこちの人をつかまえて、船がいつ着くのか聞いても仲々返答が一致しない。およそ4:30着であるらしいが。こんな最中に、カプチーノを持ってうろうろしているおっさんがいた。あいかわらずのんきやね。船内の倉庫に並び、入口が開いたとき、みんな、おおーーーっと叫んだ。まるで、天の岩戸が開いたように。

 

  薫がくるみを叱咤激励して出口へ急ぎ、T.Cをギリシャドラクマに変えた。今の日本円の(ギリシャでの)相場がいくらかはわからぬが、USドルを媒介にするとなるほど、とても得をしたようで、2人で喜んだ。もう一つの駅まで歩き、電車を待つ。

 

  そこにおばさんがやってきて、「セッテ」と列車到着の時刻を教えてくれた。どうもイタリア語ではないので、スペインか?と聞いたら、おじさんとおばさんはペルー、若い女の子のはメキシコだといった。薫たいそう喜ぶ。「いいなあー。」声が上ずっていた。どこから来たかと問われたので、「Soy de Japon」と答えると喜んで、次に名前は?と聞かれた。一生懸命思い出して、「Me IIamo Shinobu Fujiwara」とやっと言った。早くスペインへ行きたくなった。薫は、いいなああ、いいなああ、を連発していた。

 

 

  時計は時差のため、1時間ほど進んでいた。調整。薫は安いミルクを買いに、マーケットへ行ったが、町の女の人はべっぴんが多く、土産物屋はおもしろそうだ、と喜んで帰って来た。こいつぁ期待がもてそうだぞ。

 

 

  列車に4時間乗り、やっとこさアテネに。主要都市なのに、がらんとして(まあ時間も遅いが)、周りも殺風景だ。TURIST POLICEを探せども見当たらず、皆目見当もつかぬギリシャ語で喋りまくっているおっさんたちをつかまえて、やっと道の向こうの橋を渡ったところにある、と教えてもらう。アテネのもう1つの駅だ。TURIST POLICEは12時まで開いているが、中のおっさんは疲れた顔をして時計を何度も見ていた。800Drで頼んだら、パンフレットをポイとくれただけだったので、そばにいた若い女の子が口添えしてくれて、ZINONというホテルを教えてもらった。

 

  みんな夜遅くまで起きていると聞いていたが、なるほど、レストランなど開いている店も多かった。焼きそばのようなうまそうな匂いがしていた。

 

  15〜20分ほど歩いてHotel ZINONを見つける。今までにない、ちゃんとしてホテルだ。受付のじいさんは英語が少し話せる。やっとTURIST POLICEから来たことがわかってもらえ、部屋に入ることができた。バス付きだといったが、シャワー・トイレ付きのセミダブル・シングルの部屋。ベランダがあり、遠くに町の明かりがたくさん見える(7F)。生ぬるいシャワーを震えながら浴びて、耳掃除をし、それでも久しぶりに気持ち良く床についた。