11月6日 風埃強しギリシャ、プラカ

  昨夜は寒いのでダブルベッドにシングルベッドの毛布を重ねて寝たが、疲れはとれている。くるみは洗濯へ、薫はひげそりに。11:00前に掃除おばさんが二度ほど勝手に鍵を開けて入って来た。

 

  12:00すぎTURIST POLICE に行ってプラカ地区の宿を聞こうとしたが、大丈夫、問題ない、見つかります、と言って、バスストップを教えてくれた。プラカは駅のポリスにとって、別のテリトリーなのだ。

 

  プラカで30分あまり歩き、600Drの宿を取る。ややこきたないが、場所が良いのとシーツが綺麗なので決めた。扉はペンキで黄緑色をしている。床はリノリウム板(Pタイル)が貼られている。場所が良いというのは、1つには遺跡の発掘かと思われる工事現場がすぐ眼下に見えることと、おもしろそうな土産物屋が並んでいることである。まず、喉が渇いたので路地をうろつくことにした。土産物屋では、獅子と蛇が出くわしている指輪を子細に検討した。

 

  昼飯は、アドリナヌー通り(ADRIANOU)をシンタグマに少し下った右手の大衆食堂に入った。繕わずに客が何かしら適当なものを食べているのが窓越しに見えて入ることにした。店の中には、空き瓶を入れた箱が高く積まれており、テーブルと椅子は安食堂のそれ。カウンターがあり、通りに面しては小窓もあって森帰りもできるようになっている。私たちが入っても特別親切そうにするでもなく、けっこう感じのいいお兄さんが注文を聞きに来た。皆が食べている、トマトの入ったサラダとお好み焼き風のものがたいそう美味しそうに見えたので、指差して頼んだ。

 

  サラダはトマトがたくさん入り、スライスの玉ねぎ、きゅうりの輪切り、塩漬け黒オリーブは入ったもので、上に白い癖の強いチーズが乗っている。薫が発見したことだが、オリーブにはみな包丁が入れてある。種を出しやすくするための配慮だろうか。トマトが甘く新鮮で美味しいサラダ。Greek Saladという。

 

  お好み焼き風のものは(あとで聞いた話だが)、Donner kabab pittaといい、薄くふっくらと焼き上げたピッツァ生地のような丸いもので、そぎ切りにした照焼き肉と、玉ねぎの薄切り、トマト1片、パセリ少々を包んである。「この温かい肉と冷たい野菜の取り合わせは考えつかへんよ」と薫が絶賛した。なるほど、これだけで肉・野菜・主食が全部バランスよく補えるのだから偉い。マスタードをつけ、香辛料がよく効いているのもミソだ。玉ねぎもスライスしたなりで水にさらしていず辛いのが、パセリのくせの強さと肉の脂っこさとマッチして旨い。薄いピッツァ生地状のものも、ただ柔らかいだけでなく、歯ごたえとある程度に粘りがあり、温めてあるのもよい。とにかく食べても食べても美味しいのだ。

 

  普通は、サンドイッチなど食べても、また何かちゃんとした料理らしきものが欲しくなるが、これは、これひとつひとつで完結していて、充分満足させられる。これが、35Dr(立ち食い、日本円で140円くらい)は安い!ハンバーガーなどへのかっぱだ。

 

  肉は細長い棒に何層も薄く貼り付けられており、それが直径40cm 長さ1mくらいの円筒状になってゆっくりと回っている。後ろには温める機械(オーブンのように赤い熱線が通っている)があり、そこを通ると、タレと脂で照焼きになってカリッと美味しく焼き上がるわけだ。おじさんはその円筒状になった肉の表面をナイフで削ぎ落とすようにして、切る。肉の塊から脂がしたたり落ちて見るからに旨そうである。タレと香辛料は何を使っているのか残念ながらわからなかった。

 

  ふたりとも目をむき、ものも言わずに食べ、2つ目をおかわりした。ビールもギリシャ性のFixというので、サラッとしていて意外にくせが強い。口当たりはよい。これもおかわりした。美味しいものを食べビールも飲んだので、いい気持ちになった2人は宿へ引き返して、しばらくくつろいだ。

 

  相当くつろいで4:30になった。

 

  シンタグマ広場の方に出るとどこも人通りが少なく、店も閉めているのが多い。路上に立っていたおっさんに聞くと、どこも日曜まで休みだという。どうせ休養日なもんでいいわいと思って、宿に帰りながらぶらつく。

 

  途中、よろづ屋でRESTINA OF ATTICA(BOTRYS)と塩つきローストアーモンド1/4kgを買う。のち、軽食屋でMILK瓶1つ買う。また昼間のDonner kabab pittaを1 per person買う。広場から宿に近づくあたりでは結構開いている店もあった。ミルクを立ち飲みしてから、3Drの絵葉書を2枚買ったが、小銭がなかったので、明日でいいという。明日来ると言って店を出た。そういえば、その前にパン屋(粉屋というかんじに粉っぽさが溢れている)でパンを買った時も、お金が2Dr足りなかったら、それでいいと言われたっけ。(このパン屋は一見古びたパンを売っていそうな店だが、中に入ると、セルフサービス式に自分で袋に入れるようになっているのもおもしろく、旨そうなパンも多い。今できたかのように油のひいてある鉄板に並べたままなのも食欲をそそる。)ギリシャ人は鷹揚なのかなあ。

 

  しばらく店をひやかして歩き、またDonner kabab pittaを買う。今度は写真を撮らせてもらう。今までpittaを作り売りしながら自分も食べていた店屋のおっさんが、急に口に押し込み、緊張した顔つきでせっせと別に関係のないところを拭いたりしていたのはおもしろかった。薫は二度目には店内に入らせてもらい撮ったが、そのときは肉の棒の前におっさんが立ちはだかっているのをどけてもらった。

 

  宿に帰り、くるみはミルク、薫はRETSINAを飲む。RETSINAは松ヤニが入ったワインらしく、アルコール度も高いようだ。独特な味がする。ローストアーモンドも香ばしく美味しい。ものが美味しいだけでもギリシャへ来た価値がある。