11月15日 最高のピッツア 、ニースのソレント

  くるみ腹痛にて薫のみ朝食。vin rougeに駄菓子屋の麩のようなフランスパン、大変古い(1回目FIRENZE訪問のときのもの)ジャムをつけて食べる。昨日より本来はvinの味が落ちているはずなのだが、旨く感じた。添え物が簡潔なせいか。スーパーマーケットにてショコラ、パン、オレンジ、チーズスプレッドを買う。

 

  10:00過ぎ、宿を出、10人近くの通行人に道を聞きながら、Musee Matisseにゆく。これはSimiez地区にある、。駅南より品の良い住宅街である。ポプラの葉が紙くずのように落ちて積もっているのを足で蹴散らしながらあるく。荷が重いのかきつい坂道に感じられた。

 

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  1時間近く歩いた。本には駅北と出ていたが、本当は北京が正しい。着いてみると扉が閉まっており、そのあたりから出て来たおっさんが休みだと身振りで示した。しばらく後に出て来たおっさんにはお前は不運だと言われた。オールノベンバーはclosed、12月からまた開く。

 

  屋敷のぐるりを廻ってみると、ローマ風の遺跡が広がっていた。ローマ風呂跡か。面白いのはMusee Matisseの窓枠の装飾が、木でできたようにペンキが似せて描いてある。一種のだまし絵である。すきまからのぞくとおばはんが家具に白ペンキを塗っていた。しかたがないので休みがてら屋敷前のサーカス小屋のようなところで座り、間食をとる。vinとpan。

 

 

  Station Centraleといってバスに乗る。2人で10Fとかなり高い。いつ駅に着くかと思っていると終点になってしまった。どこが駅かと聞くと、Ici(ここ)だと言う。おかしいので、S.N.C.Fは?というと、5番のバス停を教えてくれた。それでわかったのだが、バス停の看板に書いてあったStation Centraleとはバスの中央ターミナルのことだったのだろう。駅に行くには、Nice railway station、あるいはgare de Nice と言わなければならなかった。バス代が惜しいので歩く、とくるみが言う。道ゆく人に聞くと駅まで2kmだと教えてくれた。結果からいうと1.5kmほどか。

 

  予定通り、食堂SORRENTに入る。REINE DES MONTAGNESとSORRENTO special(ともに27F)と、Vin blanc(2.5L)を頼む。

  REINE DES MONTAGNESは、山の女王(以下、薫訳)というPizzaで初茸、鼠色のBOLET、食用茸の一種(chanterelle)、バジリコ、ハム、トマト、オリーブ、チーズが入っており、ペッパーオイルを振りかけて食べる、大変香りの良いPizzaだ。何物かわからぬ山椒の実のような形(モスグリーン色)のものをすりつぶしてオリーブ油と合わせたような物がよい香りの発生源なのではないかと思う。トマトペーストも単調ではなく控えめな塩気と複雑な味わい。本当にマーベラスだ。ペッパーオイルは、ワイン瓶の中に生のペッパー(枝付き)やニンニク(皮付き)、レッドペッパーなどをめいっぱい封じ込め、オリーブ油を注いだもので、それがテーブルの上にどんと置かれたときは、何だ、これは!というかんじで、また、楽しまされた。この店は本当に客を喜ばせる工夫があちこちにある。

 

  SORRENTO Specialは海の幸をふんだんに使った特製Pizzaで、アーティーチョーク、ムール、小エビ、ケーパーの花つぼみ、まぐろ、オリーブ、トマト、チーズ、バジリコ入りだ。小エビなんぞは小さく丸まった冷凍のムキエビと違い、体長4~5cmくらいの殻付きエビがぽんぽんとのっているのだ。その他、ムールもあちこちに丸くなってチーズに隠れているし、いろいろな味がして飽きるということがない。

 

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  2つのピザを半分ずつ食べたのだが、最初のは香り豊かでコクのあるタイプ、あとのは具が多いがあっさりしたタイプに感じた。どちらも個性豊かで実に旨かった。本当に美味しさを満喫しながら食べ終えた。(この後、コーヒーとケーキを頼んだが、ピザに比べると書くべきことが少ないので、省略。ただケーキは大きく、フランス風に軽やかに作ってあるなという気がした。)

  ここのPizzaはイタリアのピザ台作りの技術と、フランス(南フランスのふんだんな魚介類を使った)の料理のキメの細かさ、というか工夫の仕方がうまくミックスされてできているように思う。イタリアのピザは豪快で素朴ではあるが、全体に塩気が強く、単調であること。それを材料のみならず、微妙な味のブレンドによって洗練されたものにしているのが偉い点だ。2〜3歩努力して進んでいる。店の作り、内装はそれほど凝っていないのに、(むしろ当たり前の趣味なのに)いちいち演出が効果的だ。常連が多いのもうなずける。十分満足して店を出た。

 

 

  駅のインフォメイションにくるみが予約のことを聞きに行ったが、英語で話し出そうとするや否や、NONと皆強く拒絶した。言葉はわからないでも聞く姿勢というものは持ち合わせていないのか。誰もかれもが皆、フランス語が達者な旅行客ではないのだろうに!できないなら、英語のできる人を教えてくれるとか、何とか言葉以外のもので意思を通じ合わせるとか手段はありそうなものなのに、それに英語も仏語も本質的には同じなのだから、おのずと似た言葉(手がかり)もあるはずなのに、とひどく憤慨した。ようやくこれも愛想のあまりよくないお兄ちゃんに、予約は必要ない、と言われて解決したが。

 

 

  14:41発のLYON行きに乗り込む。1等のコンパートメントなので、座席の間などゆったりとし、色も茶色を基調として新しい感覚にまとめられているが、薫は「フランスの列車はデザインばかりに走り、乗り心地(座り心地)のよさというものを考えていない」と愚痴を言った。しかし、フランスのどの列車も窓だけは広く綺麗で、(たぶんグレーの色がつけてあるのだろう)外のものの色がくっきりクリアに見える。

 

  畑に小さい葉のついた木が並んでいたので同席のフランス人にこれは何かと尋ねると、ムニャムニャと答えたのでぶどう酒の瓶を指すと、そうだと言った。レザン、ぶどうである。小さいが、というと、来年9月に収穫するのだと教えてくれた。

 

 

  マルセーユの駅は広くはないが高台にあり、建物の外がゆったりしているような感じがした。まあフランス第二の都市にしては小さな駅だ。オフィス・ミュニシパル・デ・ツーリスムでシティマップとホテルリストをもらう。受付嬢感じ良し。マップの写真も古い観光写真のようで雰囲気がある。電話はしてくれなかったが、安いのならこのへんがいいだろうと指差した。どこかと違って何かを伝えたい気持ちがこちらにわかるので悪い気がしない。

 

  しばらくGAMBETTA通りを歩いて安ホテル探し。北側はコンプリのところも結構あった。南側の見聞も重ねた結果、43F、ダブルベッドのホテルに決める。

 

  ベッドは簡易ベッドのようで低い鉄枠で組んであり、針金のネットが張りめぐらされているだけのハンモックのようなものなので、どうしても真ん中に寄ってしまう。一応、枕カバー・シーツなぞはそんなに汚くなく(のりはついていないので新しい洗いたてのものかどうかはわからないが)少し安心。

  壁紙が改装のため、貼られてあるが、素人の仕事か、ところどころ剥がれているのが目につく。しかしペンキ臭くないのはいい。ドアにはたいそうなコート掛けと帽子掛が用もないのについており、ここにもまた同じ壁紙が張りまくってある。隅の方に50cmくらいの幅のヒーターがあり、使うと8F払わないといけない。

  他には、電話台のようなものと木の机(上にタオルが敷いてある)と安食堂のいす、それに古くて鏡の周りの色が変色しているような洋服タンスが1つ、ビデと洗面台がある。洗面台は古いからか、長いこと客が入らなかったからかひからびて薄茶色の斑点が散っている。ここはお湯も出ない。部屋に入った時、ヒーターの上を小さなゴキブリが走っていた。

  おばさんの感じが結構良かったのと(小ぎれいにしており、シーツなどもこまめに洗濯しそうに見えた)レセプションや階段の上り口に花などが置いてあるのも暖かい感じで家庭的に見え、(台所の赤チェックのカーテンも)決めたのだった。しかしトイレはなおすごかった。便器の内部が汚れているのはもとより、手洗いが流しの三角ゴミ捨てのような格好で、茶色やら黒やら不気味な色でまみれている。そこに手を出すことによって汚染が進む気がする。そこでふたりとも便器のふたをあげて、高い便座の上に飛び上がってうんこをした。最初、薫は便座に向かっていたので、うんこが外に転げ出しそうになった。

 

  便所から出ると、外は真っ暗であるので、小さなあかりを頼りに手探りでゆくと、タイマーにあたる。これを回すと少しの間、電気がついていてくれるというケチな仕掛けになっている。この辺が安宿たる証である。無理やり取り柄を思い出すと、灯りが明るいということがある。天井と洗面台と2つあるが、2つとも電灯のサイズが小さい割に厳しく強い光を放っている。それでわずかに貧乏くさい印象が薄れる気がする。

 

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  夜には街に出て、オレンジとカビの生えたような白い太っちょハムを買った。ディナーではこの太っちょハムを切ってまわりの青カビを削いで食べたが、胡椒が効き、身が締まったような生のような感じで油がにじみ、仲々旨い。マスタードをたっぷりつけたパンとそのサラミ状の肉を交互に食べた。最後にショコラを飲み下してFIN!