9時過ぎに宿を出てアルカサールにゆく。曇り。時々、太陽光線。ひとり50ペセタ払
い、庭と建物を見る。イスラム形式と言う割には、様式が読みにくい。手入れも良いと
は思われない。建物の一角はレンガを積み直し再整備していた。建物の一角にある塔か
ら見晴るかすリオの風景はいい。くるみは石畳と壁のライオンの絵を写した。風邪気味
にて何度も鼻をかむ。声も少しふがふがしている。
ここにもオレンジの樹が生えていて禁断の果実のように、くるみには思われた。歩いて
いても安いレストランがなさそうなので、またしても、cafeteria MILANにゆく。昨日の
おっさんが7番と8番が好きだと言ったので、うちビーフステーキの8番を2人とも
頼む。期待以上でも以下でもない。うまいタイミングでジプシーの女性が子供を抱いて
金をせびりにやって来た。まずくるみの背中をとんとんと叩くので振り返ると、手を
出してこちらをじっと見ている。noと言って知らんふりをして食事を続けながら、
ちらと横目でみると、薫の食べているビーフステーキの載った皿をじっーと睨んで
今度は薫に金をねだった。こんなもん食べてるのに金くれへんのかという顔つきだっ
た。しかし、薫もまた身振りで拒否し黙って食事を続けたので行ってしまった。
あまり気持ちの良いものではない。
ジプシーとはどういう経緯でどういう人たちがそうなり、現在どういう差別を受けて
いるのだろうか。職にありつけないのだろうか。おっさんのジプシーを見かけないのも
不思議だ。それに子供を女の子が母親をすると、ずいぶん若い母親を多く見かける。
思い出したが道を歩いていると、砂にまみれたゴム草履をはいた女性ともう一人の女性
(どちらも子供を抱いているのだが)がふたりで回る場所を打ち合わせたらしく
二手に分かれ散って行ったのをみかけた。cafateria MILANで今日金をせびった女の子の
耳にはイヤリングが着いていた。心なしか皆誇り高い顔をしている気がする。
ジャズギター奏者ジャンゴ・ラインハルトもジプシーである。
宿に帰り、レフトバゲッジのお礼を言って駅に向かう。おばさんが2階から顔を出
して、Adios!!と手を振ってくれた。ばあさんもよたよたと歩きながら、何回も手を振っ
た。駅では切符売り場のおっさんがぐずなのでチケットを得るのに數十分を要した。
ほんの6〜7人並んでいただけなのに。
チケットを得てもホームの場所が分からないので探していると、荷物係のおっさんが
教えてくれた。しかし、それは同じSEVILLA P.A行きだが、時間が違うと言っても納得
しない。くるみの手を掴んで乗らないと怒られそうな勢い。
親切だががんこで閉口した。結果的には我々のがおっさんの言うのとは別便だと分かっ
たはずなのだが、最後まで違う列車を指差して、”あれでも行ける”と言っているようだった。時間の差など何でもないという考えからか。
SEVILLA行きrapidの車内は、うすい珈琲色で枕カバーまでまとめられていた。座り
心地は特にいいということはない。途中、広大なオレンジ畑が見えた。
SEVILLAの駅前は、貧相である。20分ほど歩いて市の中心部にはいる。四時半を
待って観光案内所に入ったがあまり教えてくれず、予約もなしで、ひどく冷たい対応だ
った。他の外人たちもホテルリストを手に途方にくれている様子だった。
2回目に聞いた時は少しはその反動でかにこっとくらいした。最初に入った係員の
おばはんは(メガネをかけ、痩せていて小さく、日本の会社の経理のおばさんといった
感じ)ぶすっとしていてやばいな、と思ったが案の定だった。
とにかく歩いて、白い家の地帯を探す。結局、ホテルレジデンス800ペセタに決めた
のだが、CORDOBAより相場が高い気がする。少しボロいところで、目立たない場所に
あっても700ペセタはとる。少しましなら800。並みに近づくと1000ペセタを超える。
しかし、この宿屋も夏場は1600ペセタでやっているようだ。
歩いて思ったが、街路が滅茶苦茶に折れ曲がっている上、うんこや紙くずで汚れて
いる。心なしか家もごたごたしているのが多い。泊まるCASA DE HUESPEDESも
コルドヴァに比べて高い上に雰囲気もない。宿をやっていない一般市民の家にこそ
情緒があるようだった。ここまでのところで、すでにSEVILLAの印象はだいぶ悪くなっ
ている。この宿のおばさんも実害がないのだが、気が強く、剣があるように感じられる
ので明日はほど近くに変わる予定。しばらく人通りの多い商店路地を散歩したのち、
宿のおばさんに教えられたCASA DIEGOで夕食をとる。
路地を引き返して来る頃には、ぽつりぽつりと雨が降る。久し振りの雨だ。
(日記を書いている夜更けには随分雨が吹き付けている。)
DIEGOでは、たまたま、くるみが1、2プレートとも淡白な味。薫はともに濃厚な
トマト味になった。トマト味のほうは店員におすすめ料理を聞いて頼んだものだった。
それに、VINOが二分の一瓶。
勘定が合わないので、店員に言いにゆく。何度やっても違うが、面倒になったらしく
こちらの言い分で釣りを返してくれた。
今日も薫が先に眠りにつこうとし、くるみちゃんだけが起きてこれを書いている。
あと小遣い帳もつけなくちゃいけない。ねむたい。。。いつでもくるみちゃんは働いて
ばかりいるので疲れる。はやく寝たいなあ。