2月23日水曜日 あんこうスープ と イカワイン煮の日

 9:30起床。しかし、外は雨が降り出しそうな曇り空。ジャム付きトーストとCCLの朝食をいつもどおりに終えたが、雨が降り出してきて雨の動物園では動物も出て来まいと思い、明日に延期することにした。薫はパコデルシアを聞きながらSopaの本を訳していたが、くるみがどうしてかめまいがする為、ベッドにて休息。昼頃、薫にもう、お昼ご飯食べるよーと言って起こされるまでは無の世界。起き出して昼食の準備に取り掛かる。

 

 〈スパゲティ・カルボナーラ

いつもやっているメニューなので、材料・作り方を省くが、感想・反省を記す。

  • pastaの本に出ている正調カルボナーラよりこちらの伊丹式の方が勢いがあって旨く感じる。何よりベーコンがカリッとしているのが望ましい。
  • 今回香辛料屋で買ってきたおろしチーズを使ったが、これがまた効果的である。引き立てている。
  • 胡椒は多めが好ましい。
  • 卵は固まっちゃダメよ。

 〈ビーフステーキ にんにくじょうゆ〉

このあと、薫は野菜が足りないと言ってキャベツ炒めソースかけをして食べた。こちらのキャベツは甘みが強く、煮物用なのか炒めてなお固さがある。

食後には洋梨。あいかわらず見た目は冴えぬのにいい味しとる。洋梨がこんなにみずみずしいものとは思ってみなかった。食後はまた翻訳にかかる。薫は相変わらず景気良く進んどるが、くるみはつまって仲々先へ進めない。残念。

 そうこうしておるうちに、マーケットのあく時間になったので、買い物に出かける。外は依然として雨。ジョルディにこの日記帳に書いたサメに似た魚を見せて、「¿Como se llama?」と聞いたがわからず、電話屋のおっちゃんみたいな額の秀でた黒縁メガネの男もいろいろ言うが、どれも当てはまらず。結局わからないからmujeres(女性達)に聞いてみて欲しいということだった。スーパーではトマトと土産用のコーヒー豆他を購入、帰りにパン屋でパンを買ってアパートに戻る。受付では、ベネズエラの女性(赤ジャケット)がソファに腰かけており、ジョルディが聞いてみろというので、魚の絵を見せて聞いた。しかし、わからないので明日教えてくれるということだった。

夕食の準備に取り掛かる。

 〈Sopa de Rape アンコウのスープ

  • 材料◆3人前

Rape 200g(あんこう1尾)/トマト1/パセリ/にんにく1/玉ねぎ小1/1ℓ/塩胡椒/パン小薄切り4/オリーブ油さじ4杯分/アーモンド3粒/サフラン

 

  • 作り方◆
  1. オリーブ油の中に玉ねぎみじん切りを入れて茶色くなるまで炒める。
  2. 角切りにしたあんこうを入れ、水1とおろしトマトを注ぐ。(今回は頭付きだったので、体の分だけ骨を抜いて角切りにし、頭や骨は別鍋で煮て身をほぐし、汁も加えた)
  3. 塩・胡椒にて調味する。
  4. アーモンド、サフランをすりつぶしたもの、刻みニンニクを加え、さらに30分煮る。
  5. トーストしたパン(今回は味が薄いこともありニンニクつき)4枚、パセリを入れ、かき混ぜながら10分煮てできあがり。

 

  • 反省◆
  • Rapeは仲々味が出にくいので、水を控えめにする。
  • 骨や頭は先によく煮ておき、身を煮るときに加えるようにする。
  • 少々塩味が濃かった。(煮詰まったため)

 

 〈イカのワイン煮〉

少し汁気が多く、味が薄まった。汁は抑えめに。

キャビア

 

これに、1973年もののSiglo。しかし、コルクにはカビが生え、薫がベッドの上で力いっぱい抜いたら、ワイン抜きがめがねにあたって、めがねの縁が欠けた。肝心のビノはというと、コルクが壊れて抜けたのだった。薫の言うところによると、悪いコルクを使っていて、時間が経ったので、コルクが水(vino)を吸って膨れ上がっているのだということだった。仕方なしに、白vinoでもって食事を始めたが、途中でもう一度挑戦して開けてみることにした。普通のよりコルクが長いので、何とか何回か崩れながらもカスが落ちずに開いたのだった。シャンパングラスに注ぐと綺麗なルビー色をしている。光がそこの方まで透けて見えるような澄んだ色だ。飲んでみると、バター味に似たコクがうまく味に溶け合ったようなまろやかな、それでいて刺激的な味である。なるほど、10年も呆然と寝ていたわけではないのだ。このvinoは日本にもよく来ている。Sigloと同系列だが、日本に来ているのは、もう少し年代が浅いものだ。こちらのはこういう麻袋で年代の浅いのがないので、きっと100ptsあまりのvinoに麻袋を着せて輸出しているのではないかと思う。坂下のvino屋で買った45/ℓvinoと並べてみると、格段に透明度がまず違う。味にも広がりがある。余計な雑物を入れずに熟成させたという感じだ。旨いvinoだとついつい飲み過ごすと言いながら、キャビアをつまみ、旨いvinoを飲み乍らよい気分になった。

薫は風呂、くるみはvinoを飲みながら日記書きをする。こういう生活もあと少し。考えてみれば長い旅だった気がする。薫は日本のことさえもはるか記憶の彼方だという。飛行機に乗った時は、これから30時間以上も座り続けていなければならないのと、初めての異国、ということで、ただもう恐ろしさだけがいっぱいだった。6ヶ月なんてとってももたないと、密かにびびっていた。けれども、外国についてみると最初は確かに足が地に着かぬところはあったが、途中からは当たり前になっていき、今ではもうこれが自然として違和感がなくなっている。味噌汁やきつねうどんなど日本的な食物も、食べ物に窮していたイギリスでは頭に思い描いて恋しくなったが、何物も満たされた現在においては、あまりその欲求がなくなっている。朝もCCLにジャム付きトスターダというのが身体に合ってきて、それ以外はあまり入らぬ気がするのは不思議な変わりようだ。日本を離れるときはさぞかし、白い飯に味噌汁が恋しくなるだろうと思っていたのに。どこに言っても都会ならば、それほど違和感がないのは、こういう旅ならではのことだろう。正月2~3日はかなり滅入って益がないとダダをこねもしたが、今になるとスペインを離れるのも少し寂しい気もする。スペインの印象も変わった。特にアンダルーシアと違ってここバルセロナはスペインと言ってもかなり気色の変わった地域ではあるが。基本的に、人間が住んでいるのだからして、そう大層な変わりようがある筈はないのだ。白い街並みも、絵ハガキでみればこそ情緒があるかもしれないが、そこの佇んでみればただ少し薄呼ぼれた白い壁があるだけだ。そういうのは、絵葉書で見ただけじゃわからない。それから今回くるみにとって収穫だったのは、いろいろな料理屋に入っていろいろは料理を食べたこと。日本ではあまり変わったところに入ったこともなかったからかもしれぬが、所変われば料理法も変わる、という具合で、思いもかけぬ組み合わせ方をする。それがくるみの概念を破ることになり、幅を拡げるという意味でずいぶん勉強になった。これは、バルセロナのアパートに住みだして料理をするようになっても更に強く感じたことだが。この旅での収穫は日本でも相当役に立ちそうだ。さて、薫も風呂から上がって来たし、そろそろ寝る時間かしら。明日はToni Vidalと会う日。