2月18日金曜日 気味悪い顔の魚がいい味を出すの巻

 

  これはsopa de peseado用に市場で買って来た魚の頭である。Pescado de roca o pescados pequenos cuya carne se desmenuce al hervin(para sopa)と書いた紙切れを渡したらこんなのが来た。政治家のような顔をした恐らく岩の魚という魚。体の色ベージュにてこげ茶の斑点(大小いろいろ)有り。眼細く鋭く何物かを見据えている。肌はやすりでこすったように、或いは猫の舌のようにざらざらとした感触である。あまり変わった魚なので、写真におさめたのち、ぶつ切りにした頭だけ絵に描いた。他にはきょとんとした眼のうなぎのような魚(グレー)大小2尾と歯を取られたアンコウ小1尾と、気味の悪い魚ばかり来た。これらはここの魚屋のべっぴんの娘(細身、色白、黒髪)に大きな包丁で内臓を取り出され、ビニール袋に入れられた。600g175pts。ダシ取りの魚にしては高いが。

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  あまり魚のことが衝撃的なので先に書いてしまったが、朝起きたところに戻ろう。

  起きたら10時過ぎであった。昨夜酒を飲みすぎたため、薫は二日酔い気味らしい。それでも何とかパンを買いにゆき、焼きたてのパンとCCLにて朝食。べっぴんのお姉さんから買って来たと二日酔いにしては余裕のある口ぶり。しんどいけれども、もう食糧がないので市場へゆく。今日は正調sopa de pescadoを本の通りにやるつもりである。「岩の魚、あるいは肉を煮る価値のない魚」がどれかわからぬので、紙に書いて持って行った。この件は先に書いたが、とにかくすごい顔や姿をしたのばかりよこした。このうちで最も不気味な岩の魚はサメに似ており、氷の上に何匹も積まれているのを見たときは、ひえー、嫌な奴っちゃなあと思っていたのに、これが真先につまみあげられたのは少しショックであった。もっと小さいかわいい小魚たちが来ると思っていたのに。

 

  あとは感じの良いおばさんの店でムール貝400g、その他シャンピニョン、トマト、玉ねぎ等々。牛肉屋では、また薫がカメラを向けたが、「No,no,撮ってはいけない」と言いながらも急におっさんの愛想がよくなるのであった。脈あり。今日はシチュー用の牛肉の他に、骨1個とパセリ少々もらう。牛骨はこの間タダだと思っていたが、10ptsとられた。「でも、おまえ10ptsなんてかわいいもんよ」と薫が言う。相変わらず繁盛している。香辛料屋も然り。

 

  シャンピニョンを買った野菜・果物屋では、少し無愛想なお姉ちゃんが友達だかに買って来てもらったチーズをかじりながら働いていた。もしかしたら市場の中のBarは、外からの客が利用する為と、中で仕事をしている人達の為にあるんだろうか、と思う。この店では、普通のより少し大きめでしっかりした形の洋梨(pera)があったので3つ買う。1kgあたり98pts600gくらいだから、48ptsであった。この頃、買う店もだいたい決まってきたし、買うものを決めてきたこともあってずいぶんと買い物の時間が短縮されるようになった。それでももう12時を過ぎているので、来たときたくさんいた人がこの頃にはぼちぼち少なくなりかけてきた。

 

  帰りがけオリーブ屋と卵屋とスーパーに寄った。卵屋では110.5ptsの新しそうなのが出ていたが今日は赤玉の8.5ptsにしてみる。ここの若主人がまたしきりにかたつむりを勧めるので、薫はterribleと言った。じゃがいもも置いていたが、結局他には買わずに店を出たのだった。今日はところどころ空をグレーの雲が覆っている。まったくの曇り空ではないが。アパートに戻り、二人ともくたびれてしんどかったが、とにかくスープ用の魚をぶつ切りにし、鍋に入れて煮た。これらの魚達はかなりな頑固者で仲々手に負えぬものもいた。昼食はシャンピニョンのスパゲティをたらふく食べ、のちCCLを飲む。しばらくしてオレンジも食す。これから夕食の仕度までの間は、薫風呂、くるみ後片付け、のち書き残しの日記書きを少し。そうこうするうちに夕食の仕度の時間になった。以下に要領。

 

Sopa de pescado

  • 材料;岩の魚他600g/玉ねぎ中1/にんにく半個/牛骨1/トマト1/パセリ1/パン薄切り7/ムール貝400g/塩胡椒・ピメントン
  • 作り方;
  1. 600gをぶつ切りにしたもの、牛骨1個、玉ねぎ薄切り1個分、ぶつ切りにんにく半分、4つに割ったトマト、パセリを水の中に入れ、2~3時間とろ火で煮る。
  2. ムールは煮たあと、殻から身を外しておく。
  3. よく煮込んだ①をザルで漉し、ムールの煮汁を入れて煮、塩胡椒・ピメントンにて調味。
  4. ムールの身を入れ、乾いたパンににんにくをすりつけ焼いたもの(にんにくはパンの表面でおろしながら塗るのだ、これはアイディア!)を入れて、かき混ぜ乍ら、なお煮る。
  • 感想;色は違うが、かなりAGUTに近い味が出せた。滋味なスープに仕上がった。まず成功と言えよう。
  • ただ、赤味を出したい一心でピメントンをふりすぎて少しピリピリしすぎた。食欲をそそる赤味を出す為にはつぶしたトマト、辛くないピメントンを入れるといいだろう。
  • パンにすりつけるにんにくは片面だけの方がよい。今回は両面で、にんいくが少し前に出すぎた。
  • パンはもう少し少なめ、と薫は思った。1.4Lのスープにパン4かけ(厚さ1cmのもの)

くるみはこれでいいと思った。薫は少し香ばしさが強すぎると思った

  • メルルーサを入れるなら仕上げの段階で、サッと煮る程度。
  • 要するに、全体の材料のバランスを取れるようにしてよく煮込めば良い。何かの味が出ばってはいけない。バランスがよいとき、何からできたかわからなくなる。

 

Spaghetti al curry

  • 材料;グリンピース(さやで500g)/カレー粉大さじ1/クラブ3かけ/サフラン6/パスタ、塩胡椒、オリーブ油
  • 作り方;
  1. グリンピースは熱湯で7分程茹でる(グリンピースはさやから取り出し、熱湯には塩を入れること)
  2. コップにカレー粉、サフラン・クラブすりおろし、オリーブ油半分、水半分を入れてかき混ぜる。
  3. 茹で上がったパスタに塩胡椒し、熱した②と①を入れかき混ぜ、出来上がり。
  • 反省;
  • 材料から予想できる味だが、本のとおり冷やして食べた方がいいかもしれない。
  • 大失敗としてはカレー粉のバランスが悪く丁字、サフランが強く浮き立ってしまった。まだ香辛料には慣れぬので、当面、よくできたカレー粉を使う方が無難。
  • 豆は新鮮で甘く美味しい。

 

  食後には買ってきた洋梨を食す。日本では腐りかけた方が美味と言われる洋梨も、ここの国では新鮮でザラザラボツボツの皮を剥いたあとが滑らかで水々しい。一見柔らかそうで実はある程度の歯ごたえがあり、鼻に抜けるほどの芳香が素晴らしい。こちらでは、よく洋梨を食べると聞いていたので、日本のより(というか洋梨の悪いイメージよりも)美味しいだろうと思っていたが、これほどとは思わなかった。甘く、酸っぱく、水々しく薫に言わせればエロチック、くるみが思うにかぐわしき美女が艶然と微笑んでいる感じがする。これを持って帰ることができないのはとても残念だ。12時過ぎ、消燈。