Pueblo Espanol スペイン村雑感 2月6日日曜日

  昨夜立てた予定通り、食パンに、単にバターと桃ジャムを塗っただけのものをいくつも作り、Espressoを薄めたCaféを水筒に入れて、Pueblo Espanol(スペイン村に出かけた。起床はやや寝過ごし、9時過ぎ。この間の日曜は確か35ptsだったのに着いてみると、手書きで40ptsと書いた看板が立っていた。ころころ変わる値段だ。平日はまた違う。METROも平日と祭日では値段が違う。(これは前位にも書いた) 入場すると、全体の見取り図を置いた家がcerradoなのでぎょっとした、また、店はいっぱい閉まっているのではあるまいかと。2の間は、昼を過ぎて多くの店が閉まっているのだと言われて、今日は午前中から来たのだ。黒鉄細工屋は今日も休み。最低限、みやげの乳鉢は買って帰るつもりなので、その店に直行する。開いていた。

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ティーホと呼ばれる水差し壺


 

  黒に近い茶をした乳鉢をいくつも比較しながら見て、香辛料が詰まったり、すりこぎが突っかかったりしないか点検した。この最中、我々があまりいじり回すので、ブスッとパンか何かを立ち食いしていた眼鏡のおばさんが「全部おんなじよ」と言って、少し敬遠した。しかし、こちらも是非支障ないものを得たいので、知らぬふりして選び続けた。3つ欲しいところがたまたま、まともなのも10以上ある中で、3つしかなかった。何かしら平たい鍋の中をかき混ぜる木べらと、木のスプーンも3つずつ買った。鉢は少し高めの値の割に良いものだが、木べらやスプーンは値も安く、良いものだった。途中少しおばはんに話しかけ、勘定の段で、我々が買ったものはどこ産のものかと聞くと、スペイン中で作っていると答えよった。台所用品で共通のものだということらしい。この部屋の中では、どうかとも聞かれたと勘違いして、「これとこれはカタルーニャだ」と、サルダナダンスと何かの人形を指さした。これはしょうもないものだった。店を出るころには、おばはんも大分愛想というか柔らかさが出て来ていた。ともかく、本命を完了したので、一仕事を終えた気分で、辺りをぶらぶらする。くるみは少しは気に入っていたらしい銅食器屋の黒鉄細工(一見コルド風、実はバルセロナメイド)3900ptsと結構高かった。ぶらさがる銅製のしゃもじなどもセットになっている。俺の見るところでは、黒鉄の模様にはあまり雰囲気あるセンスがなかったようだから、まあ買わなくていいでしょう。

 

  少し先を右手に折れて、CERAMICAの店に入る。ちょっと覗いてから小道を隔てた部屋にゆくと、ひげのおっさんが粘土をこねいて、「5分したらろくろを回すから来い」という風なことを言った。いったん出て、毛糸で編んだ民芸調の座布団や前掛けを売る店やらを巡る。再度、CERAMICA屋に戻り、くるみが値段やらを聞いていると、おっさんが愛想良くなって「これは私が描いたものだ」とか「これは父親で、これは息子」などと言っていた。息子のは、年端ゆかぬせいか、上手ではなかった。しかし、この眼鏡をかけた時計屋のおやじのようなおっさんが、飾ってある皿を描いたとは恐れ入った。とてもそうは見えない。商売人(dealer)だとばかり思っていた。ひとしきり話した後、ろくろを回す部屋の奥手に案内されて、作りかけのタイルや絵の具が並んでいるのを見せてくれた。そばには、完成しかけた同じタイルもあった。2回も作業場だということだった。その部屋を出ると、隣ではひげがろくろを回し始めていた。よく厚みを均一にしながら、形を整えられるものだ。Showmanshipを発揮していろいろと粘土の形を変えて見せてくれた後、糸でこれをくびりとって、つぼの上部はやはり糸で縦に切って、ペロリと粘土が左右に垂れるようにして、断面を見せてくれた。ここで挨拶して去る。

  広場のレストラン下、鳩のそばで昼食とする。鳩が人の投げるパンに群がり、バタバタと騒がしい。どちらかというと、この動物をあまり好きではない。食中、知人への土産を大方買ってしまうのを決め、CERAMICA屋に戻る。しばらく考え、くるみが紺(あい)、山吹と草色の柄、中央に山吹の鳥がいる大胆な皿を選び、一旦値切っておいてから、紺が主の砂糖つぼも見て、いくらになると値切りかかる。この間、おっさんは大きく売れる喜びをこらえてか、値切りにどう抗するか考えていたのか、言葉数が少なかった。くるみが砂糖つぼも10%引きかと聞くと、彼はメノスと答えたので、俺が計2500ptsじゃ困るんよなあと日本語でくるみに向かって言い、しばらくぶつくさ考えていると、下向いて仕事していたおっさんが紙片に、650と書いてどうかという顔をし、1700を加えて、合計2350と示し、これでいいだろうという表情をした。しばらく考えてから、決断を委ねられたくるみが思い切ったように、しかし押し殺したような声で、「dus por favor」と言った。おっさんは黙って、ceramicaを包み出したが、喜びが滲みでてくるようだった。ここで、砂糖つぼがもう一つあったのを思い出し、それとも比較してみることにし、俺が「ちょっと待ってくれ」くるみが「同じ他の奴も見たい」という。おっさんは「バッレ」と言って、出してくれた。よく見ても、色といい、艶といい、あまり変わりない。先のが、No.23に再度決める。くるみが「飛行機なので」とよく包んでくれるよう仄めかす。砂糖つぼなど蓋もくるんでから、テーブルの上で転がしてみせた。余計なことはしなくて宜しい。スペイン人はすぐにおちょけるから困る。モロッコ風買物袋にしまって、adiosをいう。おっさんは「Adios,adios」と船が港を出るように、最初少し大きく、2回目のadiosは小さく優しく、別れの挨拶をした。相手を怒らせるほどには値切らなかったが、人のいいおっさんが思い切って引いてくれたと考え、今は満足することにした。

どうも、モロッコ以来、徹底的に値切らないと気が済まない性分が身についてしまっている。それで、相手が少しでも余裕があり、喜んだりしていると、少し甘かったかなと考えるのだ。スペイン人は変に見栄を張り、値切ったりせず(マドリッドの蚤の市でも値切る人を余り見なかった)、その上、人がいいのでこちらの値段交渉には扱いにくい。つまり見切る頃合いが肝心というわけだ。但し、夢々粘ること忘るるべからず。

みやげを買って、身が軽くなった思いで、Pueblo Espanolを出る。ミラマール展望台に行こうかと迷ったが、荷もあり、ミラマールはMuseo Miroに近いので、次回に延期。Metroでアパートに帰る。相変わらず、ちらちらとこちらを見るガキやおばはんがいた。駅では、右を向いたらガキが見ていて、左を見るとお姉ちゃんが見ていたので参った。まあ、顔が違うっていうのは珍しいから仕方ないか。俺も、見馴れぬ外人の顔などしげしげ見たいと思うのだから。見たいと思うことは自然な反応であるというところから出発して、その見方を考えなければならないだろう。当たり前のことで相手が嫌がるようではいけない。黒が黄を、黄が白を、白が黒を見たいのは、ごく当たり前のことだ。それほど、表面の違いというのは、人間の気持ちにとって大きいということを知るべきだろう。気持ちは揺れやすいものだ。表面が表面として見えるということ。もっとややこしく言うと、内容、表面、外容という関係が相互にあって、物質社会ができているということ。心は外観と密接な繋がりを持ち、外観は外界に接し、心は外観の内側から外界を覗いている。

昼食が軽かったので、残りのサンドウィッチを食べ、昨夜のsopa de ajo2人して食す。味こなれ、少し濃いが旨し。これは簡単な料理を手に入れた。しかし、日本のパンではこうなるものかというか。例えば、日本のパンでこうなるものかというか。例えば、日本のパンは時間が経つとカビが生えるが、こちらのは、ともかくカチカチになる。違うのだ。書き忘れたが、今日Pueblo Espanolでいくつか試聴した上で買った2本のPaco de Luciaのテープを聴く。ともに、日本でいう海賊テープだった。前に買ったテープ(Philips)と全く同じ演奏がいくつか入っているのだ。その上、音質が悪い。取り柄は安く、他のギタリスト及びPacoの他の演奏が少し入っていることだろう。くるみは悩み事ができた上、風邪気味なのでベッドにもぐりこんでしまった。洗い物をしたりしてから、俺だけ、くるみの作った牛肉の赤ワイン煮、パン、緑オリーブ、ビノで夕食をとる。牛肉にの牛、少し固めだが、玉ねぎも練れて、仲々滋味だった。難を言えば、わずかに塩多し。煮物は、くるみが熱ありでおかゆさんだというので、全部平らげてしまった。片付けて、くるみ寝る間に、おかゆさんを作っておいた。しばらくして起きてきたが、頭にフラメンコが響いて、余り寝られなかったという。そういう時は云えちゅうに。こっちは気ィ利かせて、ボリュームをしぼったつもりなのに。遠慮無用。少しは元気を取り戻したのか、くるみはグラナダで食べた小魚のフライを作った。

材料;ピーマン大1/2強、玉ねぎ中1/2、トマト小3、小魚100g、小麦粉、サラダオイル、オリーブオイル、酢、塩胡椒

作り方;

  1. 酢、オリーブ油、胡椒、塩を合わせて、ドレッシングを作っておく。
  2. トマト、ピーマン、玉ねぎをみじん切りにして、①に入れる。トマトは種をとっておいた。(ロッコソースへ)
  3. 小魚に小麦粉をまぶして、サラダ油で揚げる。今回はフライパンにたっぷり目の油を熱し、炒め揚げにした。小魚がくっつきあって、透明のだんごになっているので、ヘラでほぐしながら全体に火が通るようにした。
  4. ③を②に放り込んで和える。おしまい。

反省;小魚は和えると、クタッとしなびてしまうので(薫曰く、魚のすり身団子のようである)、揚げたてのパリッとしたものを別の皿に置き、食べる直前に野菜と和えるのがよかろう。このtapasの良さは、小魚をサラダにしたところと、ピーマンを入れたところにある。事実、これが長所なら別に今日使ったしらすのような魚でなくとも、もう少し大きめで安めの魚や、イカやタコのようなものをみじん切りにしたものなどでもよいのではないか。その時、主菜はカリッとしていることが命のような気がする。

 

ついでに牛肉の赤ワイン煮も。

作り方;

  1. 薄切りにした玉ねぎ1個、角切りにした成牛肉350g(塩胡椒したもの)を油で炒める。
  2. ①を鍋に放り込み、水少し、ローレルは1杯加えて、少し煮る。
  3. そのすぐあと、赤vinoをどぼどぼと(cup1杯弱)注ぎ、とろ火で煮る。
  4. 途中で塩加減を見ながら、味にふくらみのないことに気づき、慌ててにんにく薄切り(2)を放り込む。
  5. とろ火で煮て出来上がり。

反省;にんにくは最初炒めて加えるべき。もう少し多めの水で、もう少し長く煮てからワインを加えるべきだったかもしれない(薫が肉固いと言ったので)。これは実はくるみが寝てる間に食べたので、くるみは途中の味見でしか知らず、十分反省することができなかった。

さて、11時。くるみはヒターノの本を訳している。一服してから顔でも洗い、寝てしまおう。

くるみは自分のことをひょうたんに似てないといいながら、オリーブ18個も平らげて、vinoを飲んだ。こううしばらくして、就寝予定。