12月19日日曜 喧嘩した1日 in Madrid

  ささいなことで喧嘩して、薫が書いている。

 

  9時半過ぎ、起床。昨夜遅く、2時半まで日記を書いていたので、まだ眠たく疲れも

残っている。しかし、奮って10時過ぎ、ラストロ(蚤の市)に出かける。

マヨール広場手前のBarで朝食。トーストはミックスか、と聞かれ、はいミックスで。トーストの上、対角線上にジャムとバターが載っている。ジャムは甘くない。このレストランは250

pesetasの定食を置いている。何も安いのは、馬徳里だけではない。

 

  少し歩くと、もう露店が開き始めていた。この辺りは人通りが少ないが、広場以南の露店街には人がい行き来し初めていた。インド更紗、スペインの流行音楽カセットテープ、アフリカの木彫り、洋服屋、玩具屋、ブティック小物、ポテトチップ屋、頭の先からバネの棒が2本

飛び出しそこに銀の風車が付いて宇宙人のようになる玩具屋、寝袋バックパック屋、金物工具店、名状しがたいガラクタを集めた店、古本屋、何やら漬物らしきものを壺で売る店、キャンバスに油絵具をのせた風景らしきものを扱う露店などなどもう多種多様な商売が見られた。

ロッコのように機関銃のように言葉を浴びせかけたり、袖を引いたりと言う激しい営業行為は見られなかったが、昼近くにはまっすぐ歩けないほど客を集めていた。

 

どこの品もおよそありふれたもの、くだらぬ俗悪なしろものだったが、ペルーなど南アメリカ

タピストリー、アルパカのセーター、敷物を置いた店が集まっていた一角は面白かった。

タピストリーでちょっとイケるのがあったが、22000pesetasだとか言うのでとても手が出ない。

 

  およそ巡りおえて、最初に見たカセットテープの店で、土着的なフラメンコを値切って

買おうとしたが、他店より安い上、売れ行きも上々なので取り合ってくれない。

仕方ない。EL SALAKO de CORDOBAという人の、CORDOBA MIAが200pesetas。

耳で選んだ。他のテープは75pesetasからあるが、これは他店でも別格の扱いだった。

  人気歌手とみた。湯原昌幸に似た顔つきなので覚えやすかった。

 

  1時前にラストロを去る。プラド美術館脇の、19世紀美術館にゲルニカを見に行くつもりだったが、2時閉館なので、延期。繰り出した人混みの中を、レストラン・マドリッドへゆく。

我々が入った頃からどんどん客が来店。2時過ぎには待ち客も出た。ここの薄利多売は

成功しているようだ。知らぬ名前の第一皿を頼むと、三種のハムの薄切りが出てきた。

もう一人は前と同じ、あっさりスープ、パエジャは真っ黄色に染まって、ぼこっと

ムール貝(大)が乗っかって出てきた。油多く米柔らかく、まさに安食堂のヤキメシ。

これが旨い。皆もパエジャを好んで取っているようだ。メインは豚のステーキ。

ここのVINOは漬物に似た酸っぱさがあるので、教訓生かしてふたりとも

CERVAZA(スペインビール)を選ぶ。

またまた満腹にて退散。こんなに安易に、まあ、まともな食事にありつけるのが

不思議な気がする。また、体力、気力が上昇し始めたら、あちこちの路地を探検して廻らねば

ならない。

 

  今日はマドリッド滞在中、唯一暇な時間を持てるので、疲れを癒し郷に従う意味から

シエスタ、要は昼寝を決め込む。

  ベッドに入ると、斜め上の部屋からでかい音でオペラが聞こえてきた。誰もが

シエスタする訳ではないのだな。部屋からうるさいと怒鳴り、相方は窓から怒鳴って効果がないので諦める。

横になると、すぐに眠りに落ちてしまった。

 

  3時間程眠ったあと、しばらくぼんやりし、夜8時になったので食事に出かける。

今晩も馬徳里(マドリッド)。店は開いたばかりらしくテーブルセットも未完了。

いつものように奥の左壁際の席に陣取る。

今日はラーメンでも食べてみようか。ロンドンの中華屋に入ってラーメンを食べた時

あまりに日本と形態が違うのでびっくりしたのだが、イタリアのBRINDISIで会った香港青年に聞くと、地方によって麺の太さが違うらしい。ここのはどうかしら。

 

  豚肉入りラーメン2つ注文。飲み物は茉莉花茶がなく水にした。ミネラルウォーターでなく

瓶に入った水道の水がきたが、カルキ臭く飲めなかった。

まだ、店が始まったばかりのせいか、待ち時間が長い。野菜を刻む音や炒める音が聞こえた後、透明な器に入ったラーメンが現れた。ガラス風の器なので冷やしそばが来たかと、怪しんだ。湯気が立っているのを見てほっとした。この間食べたやきそばの具のごときあんかけ

野菜炒め(焼豚千切り入り)と麺、スープはあまりたっぷりしてはいなかった。

一口スープをすすったが、全然塩気がない。しかし、食べ始めてみると塩気のある野菜炒めが

上に乗っかっているので、スープに塩味がついていない方が適当なのかもしれないと思い直した。

  でも、よくこんな麺を仕入れることが出来るなあと考えていて、はたと気付いた。

この麺は実はスパゲティなのだ。この間から(焼きそばを頼んだ時から)ずいぶん太い麺

だとは思っていたが。手打ちの麺なら角があるはずなのに、これはつるつるとして丸い。麺の

滑りもいい。

スパゲティーは小麦粉を原料にしているが、オリーブ油を練り込んで作るので独特の

口当たりと歯切れ良さがあると何かで読んだ。

  昨夜のスープの中のマッシュルーム(椎茸の代わり)といい、異国の地でいかに

仕入れに金をかけずに安い金で旨いものを食べさせられるかという機転が見られたような

気がした。既成の概念に囚われず、どんどん新しいものを中国風に取り入れてゆく

やり方も中国らしく思われた。海外で中華料理が生き残り広がる理由はこんなところにも

あるのではないか。

  このスパゲティスープは意外にボリュームがあり、このあと何か一品と

ご飯を食べようとしていたが、これでフィニッシュにした。

 

  ここで思った。他人の情報だけに頼って毎日安易な食事をするのはやめよう。

他店の開拓は自分たちの足と舌でやろう。他を知らなければ比較も出来なかろう。

 

  店を出てからVINOを飲みタパスをつまんで仕上げにしようとBARを探すが、

今日は月曜日。ほとんどの店は休業。客入りのよいBARを見つけVINO TINTO

(赤ワイン)を注文。ここは戸口から奥へ木のカウンターが続き、カウンターの奥には

ワイン樽が並んでいる。店内は客が立て混み、煙草のけむりがもうもうと立ち込め

霞んでみえる。白やモスカテルのような飴色のワインを飲んでいるひとは多いが

それよりも立ち話のほうに花が咲いているようだ。もうもうとした

けむりのせいか薄暗い明かりのせいか、どことなく雰囲気のある店ではある。

しかし、ワインは水で薄めたように不味かった。タパス(つまみ)もなし。

にいちゃんも感じ悪し。早々に金を払って引き揚げた。LA CUENTA!

24pesetas。そうか、ここは安いから流行ってるんだな、と薫。

 

 

  ぶらぶらとLa Vegaのある通りを下り、突き当たり一つ手前を右に曲がってゆくと

景気良くカラマワリ(いか)を揚げたり、オムレツを作っている店があった。

ここも大変な人の混みようである。ジョッキやグラスでビールを飲んでいる人が多い。それに

申し合わせたように丸い分厚いオムレツを取っていた。

我々はvino biancoを注文。tortella espanolaもひとつ。愛想のない小さな水コップみたいなので出たが、味はまずまず。オムレツにはブロシェット(串焼き)にかけるような辛い

タレがかかり、パンが一切れついてくる。

オムレツには、ポテトがふんだんに入り出来立てで中々。このタレがミソかな。

vinoをお代わりして飲んでいると、薫が言った。

”ここが面白いのは色んな人が来てるところだね。金持ちそうなのもいれば、そうでない人も

いる。”

  そういえば、年齢もいろいろで子供連れやら、ひとり暮らしっぽい酔いどれ老人、毛皮を

まとった婦人と紳士、あほ青年、若いアベックなどなど。どの人もこの人も

オムレツを頬張っている。このオムレツは85pesetas。vinoは一杯16pesetas。

勘定はというとスペイン人にしては珍しくすばやく計算し間違わずに150pesetas!

と叫んだ。まっすぐ宿に帰る。

 

追伸、朝起きてくるみの頭を見て一言。”ヒガンバナみたいだなあ。”

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