トレドの陶器 12月18日 土曜

  やはり、疲れていたのか7時の目覚ましが鳴っても起きる気にならず

予定を遅らせて10時の列車でトレドに行くことにする。ここのベッドは安宿の割にマットが柔らかく、又柔らか過ぎず寝心地がよい。

 

  まだ寝静まった宿を出、いつもの角の無愛想なお兄ちゃんのバールで、tostadaと

cafe con lecheの朝食。ホットプレートで焼かれたトーストはナイフとフォークで切って

食べるのだった。

薫はマーマレードを拒んだため、何もついていないトーストを食べるはめになった。

120pesetas払って駅に向かう。トレド行きの列車は結構な混み具合だった。

 

  途中通ったアランフェスの街は感じの良さそうな街並みで、いそいそとした外人の二人連れが下車していった。

 

  TOLEDO着。ここの駅は凝りに凝っていて、天井のメスキータ風木彫り、壁の絵タイル、床のレンガと小さな絵タイル、切符売り場の細工など。駅外観もイスラム様式をふんだんに用い、これでもかこれでもかと言うほど。

 

  街の中心には歩いていけるというので、先を歩いていたおじさんと女の子に聞くと

一緒に行くことになった。名前を名乗り合い、握手を交わす。市街地へはタホ河に架った

ロマーノ橋を渡り、お城の門のような石造りの囲いをくぐって階段を登ってゆくのである。

さすがに中世の面影を残した、と言われるだけあって観光地にしても、珍しく雰囲気のある

街だ。黄土色の土と黄土色の城壁、悠々たるタホ河、と眺めも素晴らしい。

街の中心を抜けて、おじさんはどんどん歩む。どこに行くのかと聞いても通じない。

皿を見ようとすると、高い、と言う。

 

  行き着いたところはメニュー700pesetasのレストランだった。先に中に入って手招きし、中でメニューを見ろと言う。我々には高いので、muy caloと言って断り、背を向けて

歩き出した。

 

 あちこち説明をうけながら迷わず街の中心まで来られただけ得をした。昼過ぎには店が

閉まるので陶器を重点に見て回る。くだらぬ土産物屋が多い中で広場をカテドラルに少し向かった道右手にある陶器専門店を見つけた。店も新しく、一眼見て品数が豊富なように

ディスプレーしてある。くるみによるとセンスもいい。絵皿はうまく日本で合わせにくいので、イスラム模様の絵タイルに関心がいった。一枚で映えるのもあれば、それ以上の組みタイルもある。

4枚で引きたつものは、それで放射線状に円を形作るものだった。

  くるみは長らく店の床に並べ頭を捻った末、いかにもイスラムらしいタイルを4枚組で買った。

高さ70センチほどの鹿を描いた傘立ても仲々よい。これらは、タラベラのか、と聞くと

あるデザインのものを指して、これがタラベラ、あれがトレドというように示し、トレド地方の各町によってデザインが分かれているのだ、と教えてくれた。

透明感のある黄緑(コバルトグリーン)を多く使った壺が特に個性的だが、これを産する

町の名前はうっかり忘れてしまった。タイルを買うときに薫が値切ろうとしたが、不景気な

顔で断られた。店によって値切りに応じない店があるのか。プライドが違う。

もともと値付けを良心的にしているということか。

 

  少しカテドラルに向かい右手の坂を戻ったところに安レストランがある。

いくつかレストランを当たったがみな600〜700pesetasと、メニューが高かったが、ここは

400pesetas。二階がレストランで、午後1時半にて客は我々のみ。

paella Valenciana  ,meluruza  Romanoこれに陶器に入ったヴィーノ、パン、flan付き。

この部屋は牛の角やら刀剣やらで闘牛の雰囲気が出るように飾ってある。

paellaは、安食堂だけにやはり鳥めしだったのがここでも証明された。赤いピーマンが細切りで紅生姜のように載ってくるのが面白い。paellaというより、余りご飯を炒めた感じに

油っけが多く、味付けも濃い。正調はサフランで色付け、香り付けするが、ここのはそんな

淡い黄色ではなく、ターメリックを使ったようにどす黄色であった。しかし、温かく素朴で

これもまた良し。

 

  ヴィーノでボケた頭でふらふらアルカーサルに入っていった。チケット売り場らしき

ものはあったが、さっさと通り過ぎた。

中庭には風が吹き渡り、寒し。一階は不気味なベッドがあったりして少々気味悪し。二階が

美術館(博物館)などに使われていた。ここの資料によると、このアルカーサルは一度

破壊され、再建されたもののようだ。

 

  3時半過ぎ、インフォメーションに向かう途中、警官に聞くと、明日がfiesta、祭りで

休みだということだった。朝会ったおっさんの言ったことは正しかった。

 

  CASA de EL GRECOにゆく。あっ、その前にその前に広場脇のBarにてcafe con leche,

dos。ここは客の入りが多く、タパス(つまみ料理)の品数も豊富。

グレコの家の手前には土産物屋が連なっていたが、そこを越えると右手に奥まった

店で、店頭に陶器を展示しているところがあった。前をグレーの毛並みの良い

巨大なハウンドドックがうろついている。中は白い洞窟のような作りで意外に

広く伸びている。

壁一面に陶器が産地別、種類別に配されている。ここがおそらくトレドで一番種類の豊富な

店だろう。

奥のグリーンのヴィーノ用注ぎ壺に目を止めた。他のはどうも地味すぎる。

1215pesetas。1200で買うつもりだったが、わずかに欠けたところがあるので、

ふたりでぐちぐち言っていたら、髭長でお洒落な兄さんは他のものを持ってきて

全然問題ないことを一生懸命説明した。しかし、日本では違うもんねーと、合唱。

うんざりした兄さんが店を閉めるから上がれと言い出したので、薫がすかさず

私は1100で買うと英語で言うと、OK!と承知した。金を置いて店を出ると、

兄さんが角まで出てきて、100pesetas札をひらひらさせて足りないと言う。

きみが1100でいいと言ったろう、と言ったらもういいと言う感じで背を向けて

店の中に姿を消した。

どうも15pesetas引いた1200で私が落としたと思ったらしい。勘違いだ。

 

  昼に行った陶器屋に立ち寄り、くるみが同じタイルを買おうとしたが、おばさんが

おらず、埒が明かなかった。無念。

 

  18時25分発の列車でマドリードに戻る。列車が出るとどっと1日の疲れが出て

ぐったりした。

マドリードに着くと、その足で、料理屋 馬徳里へ。今日はmenuのBとC。

初めてのCは、メインが鶏角切りと豚角切り、玉葱角切りの唐辛子入りあんかけ。

ふたりで半分づつ食べた。晩飯の場所が決まっていて、それも中華料理だとひどく

ほっとする。疲れた空腹に沁み渡った。

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  やや持ち直した足取りで、宿に帰る。