宿探しで大通りを歩いていると、目の前を横切ったおっさんが後ろを指差し何事かを言った。
後ろをみると、くるみが泣きそうな顔をしながら、まだ起きあがりかけたままの猫背の姿勢で
駆け出してくる。
あれっ?気がつかないうちにずいぶん距離が離れたなぁと、思っていると、車道と歩道の境目で
前のめりに転び、荷の重さで亀のように横倒しになったのだと言う。膝や肘には、土がついていた。
ゾロゾロいるモロッコ人の眼にビビりながら忠実に跡について歩いているつもりだったが、何の弾みか端を歩き過ぎて段差で転げてしまった。うしろでは、モロッコ人たちの、おー、と言う声が聞こえた。薫は、振り向きもせず、いつもの外股ですたすたと遠ざかってゆくばかりであった。
モロッコ人に助け起こされ、金でもせびられてはいけないと、必死の思いで這いつくばって
起きあがり泣き声になりながら走ったが、薫はまだ何も知らず歩いて行ったというのだ。
そばのおっさんが薫に、落ちたよ‼️くらいのことを言って、初めて立ち止まった。
くるみが駆け寄りながら、今落ちた。と言ったら急に、ワッハッハと笑い出し、
お前落ちたの、とまた聞き、可笑しそうに笑ったのだった。
第2話 モロッコのおばあさん編
ホテルに入ると、蝋人形のような小柄なおばあさんがズボンをまくって、スカートだったか、
裸足でぞうきん掛けをしていた。最初どこからか水のピチャピチャしたたる音が聞こえていたので
何かと思ったら、婆さんは上から水を流し、雑巾でもって水をどんどん下に落とすようにしているの
だった。変わった掃除だ。何回もバケツで水を汲んではバシャバシャやり、ホテル前のコンクリートの
歩道まで裸足のまま、いつまでもぞうきんで水を追いやって居るのだった。
3話 大都市 フェス雑感
このホテル周辺はFESの中心部だが、歩いてみても電気屋や文房具屋が見当たらなかった。
ガードマンの張り付いた重厚なモロッコ銀行がそびえている脇で、こ汚いカフェが
店を開いており昼間っから大の男がしゃべったり、通りを見やったりしながら、いつまでも
席が空く様子がない。
TANGERの経験では、この中に客引きが居たりする。一体にアルコールが呑めないので
カフェが多くそこには同じようにモロッコの男たちが昼間からたむろしている。
どうやってメシを食っているひとたちなのだろう。
LABASSE. HELLO
BESLAMA. GOOD. BYE
LAILA. SAIDOC. GOOD NIGHT
HALI. EXPENSIVE
OIKT. TIME
FOUNDAK. HOTEL
BEZAF. TOO. MUCH
LA. NO
NAHAM. YES
ZUINE. NICE
SIR. GO
TAALA. COME. IN
HAK. GIVE
ZIDE. LET S GO
BELATI. SLOWLY
アルヘス CHEAP
シュクラン THANK YOU
スマハリ PARDON
ナラメ セラーム GOOD MORNING
ムラ MRS