タンジェでごたごた、スペイン アルヘシラスへ。12月6日 月曜

 昨夜、ペンション マドリッドの3階トイレに入ったが、これはモロッコ式で

(トルコ式)水道からバケツに水を汲んで、何を流さないといけない。薫は

4杯で完了。セルフサービストイレットと言うべき。

 

  9時前起床。一旦、駅で列車時刻を確認した後、窓口でフェリーボートのことを聞くと、列車に乗らなくてもポート、港まで歩いて行けると教えられた。手が12分を示していた。

 

  TOURIST INFORMATIONに行き、フェリータイムと買い物通りを聞く。買い物は

メジナでと地図を指さした。

 途中、小綺麗なCAFEに入り、CAFE AU LAITを飲む。平丸パンが2、5と高い事を云うので止めて、CAFEだけ飲んでいると、おっさんが来てクロワッサンを1、5ではどうかと言うので、少し考え、頼んだ。まもなく一人の少年が通りを横切り、向かいの

パン屋に駆け込み、クロワッサンを買って戻った。ははーん、、とうなずく。

 

メジナを巡る。目的物は、スツールとカセットテープに狙いを定めている。

外にいたお兄さんが坐っていた皮スツールが結構よかったので立ち止まって見ていると、そのお兄さんが店の中に招き入れた。眼を止めたのは、ナチュラルカラー(ベージュ)に押し型をし、黒と金の星形模様のついたもの。大、中、小とある。

大を選び、70まで値切ったが、それ以下は決裂。ここで聞いたが、皮には三種類あって

らくだ、山羊、羊。この順にすぐれて、値も高い。眼をつけたのはヤギ製。裏にギャランティとあり、製造元を証明する押し型が入っている。これがベスト クオリティだという。たしかにこの店のは縫製などきちんと出来ているものが多く、デザインもやや

洗練されすぎているが、まともである。大は170、中は140、小は120ディラハムと言う。安物だと言って見せてくれたのは、羊皮に彩色したもの。これだと安いという。

ラクダの皮と毛を繋ぎ合わせたパッチワーク式のは変な形で、210ディラハム。店を出て他の店を覗きにかかる。

 

  このメジナは長方形をしているので、短い辺の方に出ると、すぐ街に入ってしまう。主に路地は、長い方に続いている。道幅はFESや、MARRAKECHより広いし、

きれいで商売人の粘りも少ない気がする。土地の人も午前中だからか、あまり多く

出歩いておらず、ちっともごった返す感じがない。不思議にRABATと同じく観光客は結構見受けられた。

  狭いので、すぐ一周して前の店の前に出てしまったら、お兄さんが待ち構えていて、70ディラハムでいいから入れと言う。ふたりで繰り込む。もう一度見て

ふたつで110ディラハムではどうかと言うと、お兄さんはむっとして、さっき70ディラハムと言ったと言う。少し粘るが、ふたつ買っても少しも値引きしないので、こりゃダメだ、と言って店を出る。ひきとめられなかった。やっぱり70が相場なのか。

色々と考えると、三つくらい欲しいので、ひとつ60くらいならいいな、と胸算用する。すぐ近くの別の店に入る。小僧が出て来て応対しようとするので、店長なのか、と聞くと飛んで少年を呼びにいった。彼に値段を聞いていると、奥から顎髭の生えた山羊のようなおっさんが現れた。大中小の値段を聞いてから攻略にかかる。

優しそうなので、くるみが口火を切った。安くならないか。おっさんは160と言う。あまりお金を持っていないというと、ベストプライスで120だと言う。夏場はたくさん旅行者がいて値段も高いが、冬場だからこうして引くのだと、説明した。

バーゲン価格だと、のたまう。三つ買うからと本音を吐き、出方を待つと220と、答えた。くるみは一個60で、三つ180が目標。引かないのでメルシーと言いながら

店を出ようとしたら、おっさんが急に近寄ってきて、ここで190に落ちる。こちらも

185にせよと、歩み寄る。

 おっさんはたった5ディラハムじゃないかと言うので、薫もすかさずあなただって

たった5じゃないか、と言うとおっさんは此奴はと言う顔をして笑い、ぱーんと握手した。さっさと奥に引っ込みスツールを三つ重ねてしまおうとしているので、185でオーケーかと、念を押し、待て待てと言って、顔を近づけて子細に点検。

三つを包んで紐を掛けてもらう。ジャスト185ディラハムを掌に乗せながら払い、威勢よくオールボワ、と言って店を出た。

 

  くるみは気抜けしたのか、蓬髪のまま乞食の子のように歩いていた。

港の見える白い建物の屋上バルコニーにゆく。街の人が塀際にたむろしていた。その近くの金属器屋でティーポットを見る。80を65まで下げたが、買わず。

 

  12時前、メジナの出口でマラケシュのと別の民族音楽テープ計2本を買う。カバー写真が新しくモダンなのは高く、手前に平積みしてあるちゃちなカバーのものは安い。

 宿に戻り、荷を背負ってレストラン クリオパトラにゆく。期待していたスープ

モロケインは2時からだと言うので、残念ながら食べられなかった。

タンジェ行き車中で聞いたTAGINEと言う料理をメインディッシュに取る。マトンと人参、かぶ、玉葱、カリフラワー、隠元豆を黄色いつゆで煮込んだものが、

ホコホコと山盛りされている。黄色いがカレーとは違って淡い味付けである。

Salada Morocainは一見野菜炒めの材料である。みじん切りで味付けもしていない。

食べかけて、くるみが気が付き、オリーブオイルとヴィネガーを掛け、掻き混ぜて

食べた。ココナッツのヨーグルトも珍しくてまずまず。

今日のレシートは品目ごとにきっちり書かれていた。昨日問い質した為だろうか。

コーラが昨日とは違い、1、5になっていたが、他の値段が多くつけられ、結果として

0、6ディラハム少なくついていたので、黙ってレシートと30ディラハムを出す。

  おっさんは笑ってきちんと8ディラハムの釣りを置いた。そばの長身の男が、

”今日はフォトを撮らないのか”と聞いたので、首を横に振る。

おっさんに、”昼にここを去る、さようなら”と言うと、スペインに行くのか、モロッコは見たか、と言うので沢山たくさん見た、と言うとますますニコニコしていた。

 

  ポートまで歩く。引き込み線のように普通の敷地を通っており、意外にVILLE(街)とPORT(港)は離れていない。

港に着き、チケットを買う。ユーレールパスで割引してもらってジャスト100ディラハム(ふたり分)。余ったモロッコマネーをここのモロッコ銀行で取り替えようとしたが、スペイン通貨ペセタは扱っておらず。どこの銀行もそうだった。フランスフラン

のみ。仕方ないのでフランスフランに。金を出すと、レシートを出せと言う。訝しんで

銀行でTCを現金にした時の紙を出すと仔細にお札を点検し、350フランだけ替え、

残りの27ディラハムを返してよこした。チェンジ出来ないと言う。あちこち当たってみたが、フランスフランの硬貨を置いていない。土産物もいいのがなく、街までゆく時間もない。

 

  仕方なくひとまずポリスのパスポートチェックを受ける列に並ぶ。硬貨を置いていないのはモロッコで使わせようという魂胆からだと思う。せこいぞ。

 列に並んでいると、人品卑しいポーターのじいさんが小銭をじゃらつかせて客に

チェンジしてやると、聞き回っていた。レートが良くないのか、交換する人を見掛けなかった。こういう人がいるのもモロッコならではである。

小銭を使ってしまおうと売店に薫がゆくと、店番の小僧が足元を見て絵葉書が2

ディラハムだとふっかける。ぶつまねをすると、1ディラハムに下げた。買わず。

港の売店でぼる奴があるか。

 ポリスの列にいたはげて髭の生えたおじさんが自分はスペインで替えようと思う、

と言ったので、我々も見倣うことにする。

  ちなみに、港のカフェは紅茶もコーヒーも3ディラハムと高かった。例のドームを

歩いて船に渡る手前でにいちゃんが皮のハンドバッグや短いジャケットを露店で売っていた。50ディラハムのポシェットを追いかけてこないように、15と言ったら、すぐさま

オーケーして買ってくれと、船の近くまで追いかけて来た。やはり要らぬものは置きたくないので、止めた。

  先の髭のおじさん、丈夫な体躯でバックパッカーのベテランといった風貌のひとが

船員がマネーチェンジをしてくれると教えてくれたので、薫があたる。最初に450

ペセタと言ったので、27ディラハムを渡すと、400まで数えたところで、やっぱり

ジャスト400だと言った。ノーと断る。

別の船員にあたっても416ペセタだと言うのでやめることにした。

 

  夕陽はアフリカとヨーロッパの間に沈んでいった。船はすでに陽の沈んだ方に

つっこんでゆくので、すぐに陽が落ちた。

寒くなったので、デッキからカフェテリアに移る。

  重い疲れを感じる。船底なので揺れが激しく、胃がおかしくなりそうだった。

スペイン時間午前8時前に、アルヘシラス(ALGECIRAS)に着く。

入国審査では、出稼ぎのおっさんが、くるみを押しのけて先にやろうと、横から

足を踏み入れて割り込んできたので、くるみは先に手を出し機先を制した。

荷物チェックはおざなりで頭辺りのファスナーを開けただけで完了。

ロッコ人はパスポートほかカード、書類を細々見られやっと判をもらい、荷物も

くわしく調べられるようだ。

 

  再びスペインで自由な生活に戻る。やっと、モロッコとは離れた気がする。一週間ほどだが、ずいぶん長く滞在していたような気がする。緊張が多かった為だろう。

刺激的な見聞だった。くるみは短い一週間だったらしい。

 

  ペンションイベリアに着くと、この間のようにずんぐりむっくりのおじさんは

玄関のところにぶらりと立っていた。顔を見るなり、こちらににこりとする。

ルームナンバー14。道路に面し前より広くスッキリした部屋だ。ふたりで

700だねと言うと、重くうなずいた。

レストランアルフォンソに行き薫はセットメニュー、くるみはポテトシチューと牛レバーを食べる。久しぶりのvinoが旨い。デザートのチーズは鞄に仕舞う。

勘定書きも嘘でない。お釣りも普通に返って来た。おまけに無愛想なおじさんも

帰る時さよならと、愛想をみせた。当たり前のことがいちいち新鮮だ。スペインの

人情味がそう思わせるのかもしれない。モロッコの人情味は十分知ることができなかった。愛想もいちいち疑わなければならないのは残念だった。

今度ゆくときは片っ端からモロッコ人を食って余裕をもってモロッコ根性をみて

やるぞ。

 

  付け加えるが、TANGERでは、ペンション・マジェスティックに寄り、くるみが

責任を感じて腹巻を奪還した。腹巻は洗濯され、心なしかゴムが緩くなったようでは

あったが。これで幾つかの山を越した気がする。次はスペインの地付き生活に向けて。

おやすみ。

追記、車中でスペイン系モロッコ人に聞いた三大モロッコ料理。

1、Caus Caus  クスクス

2、Tajine          タジン鍋

3、Paulet Rati  パウル ラティ 不明