11月13日 ニースのpizzeria イケル。イタリア人シェフ。朝から雨

  フルーツサラダ、ハムサンド、ミルクの朝食。だらだらしたのち、日本行きの小包を作るなど雑用をする。

 

  正午前にホテルを出たが、おばはんは我々の長居にうんざりしていたようだ。もう1日泊まるのかと聞かれた。インフォメイションで18000リラと言われたが、I.V.Aで18500リラ取られた。これは部屋に明示されているので文句は言えず。100リラのビンを返す。

 

  12:00少し前に、駅のウフィーチョポスターレに着いたが、とにかくやっていないという。少し英語のわかる男を介したところでは、ここでは小包を扱わず、よそでも月曜からだという。しばらく小包を持って歩かなければならない。

 

 

  発車時刻まで、くるみはジューズ買いと両替にゆき、薫は荷物番。発車10分前に2頭の馬にひかれる壮大な石造建築、MILANO CENTRALEを写真に撮る。

  発車後まもなく、昼食に取り掛かる。ジュースは1本のため、切り札とする。飲み物なしで、ハムサンド、チーズサンド、マヨネーズ付きセロリを食べ、ひと段落しておもむろにナイフを取り出し、くるみがフルーツサラダを作って平らげた。相席のイタリア人は恨めしそうに何度も横眼で見ていた。

 

 

 

  途中、左手に白っぽい黄緑色をした地中海が見えた。天候が悪いせいか波が荒れていた。この海の色を見ると、すぐフランス的だと思うのは何故だろうか。

 

 

  7:00過ぎNICE着。宿は全体に空き気味。53Fと最も安い宿に泊まる。素泊まりで少し良いところだと70Fが相場。このHotel de la gareは部屋はまともだが、あのHotel Stellaのような匂いがする。イタリアの宿にしてもそうだが、何で安い宿には共通した匂いがするのだろうか。

 

  ベッドはダブルで小さい穴がところどころにあいたピンクのベッドカバーが覆っている。一応汚れてはいないようだ。片隅にビニールのカーテンで仕切られて、ビデと洗面台があった。それに、化粧合板のテーブルと椅子が2つ。洋服ダンスのかわりに、やはりビニールカーテンで仕切られたハンガーかけがあった。トイレは安宿にしては小ぎれいにしているが、水と一緒に泡が立つので、何となく汚らしく見える。ペダル式のくず入れは、ポリバケツにペダルを無理やりつけたようなもので、踏むと倒れてくるので困る。でも値段は安いし、Stellaよりマシだという結論に達した。

 

  近くのレストランをさんざんのぞいた挙句、Pizza屋の前で迷っていると、中から出て来たおばさんとおじさんが「とてもいい」というので入った。

 

  店内は奥行きがあるが、各テーブルは簡単で小さなつくり。客の入り上々。くるみがスパゲティ・カルボナーラ、薫は先のおばさんの勧めてくれたピザ(季節のピザ)を頼む。白ワイン500mlも注文。ピザ・スパゲティは24〜25Fくらいからで少々高め、ワインもイタリアよりは高くなる。

  カゴに盛られたパンとワイン、そしてデカンタに入った水が、テーブルに置かれる。冷たい水も一緒に持ってくる心遣いが嬉しい。ワインは辛口のイタリア産ワインと思われる。陶器のデカンタに入っている。

 

  くるみのカルボナーラが先に来た。温められた皿と盛り皿、そしてどんぶりのような器に入ったゆでたてスパゲティバターまぶしハム入りと殻に入った卵の黄身が運ばれて来た。どんぶりから各自で盛り皿にスパゲティを移し、卵の黄身を好みでまぶしてできたてを食べてもらおうというやり方らしい。スパゲティは固からず柔からず、わりと太め。塩気は抑え気味で、結構旨かった。f:id:dodicidodici:20181127163914j:plain

 

  薫のピザはさすがお勧め品だけあって、貝の身をほぐしたものや、白身の魚、オリーブの実など盛りだくさんの具がのっていて、味が複雑で実に旨い。ピザ台は極薄で、具とチーズの邪魔をしない程度に軽やかである。薫は、日本を離れてから食べた中で最も旨いピザだと言った。

 

  2人で食事をしていると、コックが来て隣のテーブルに置いてある花(紫の菊)を取ってくれという。コップごと取ってあげると、るんるんと楽しそうにしながら、皮をそいでリボンに結んだ。レモンに菊の花を挿していた。他にはいくつかの野菜とじゃがいもの焼いてホカホカになったもの、長い鉄串に刺された貝の身が見事に置かれた。これが、ブロシェット・ド・メールか、と先のおばさんが言っていたことを思い出した。ジュウジュウに焼けたそれらの美味しそうな食べ物の上に、これもまたジュウジュウと音をたてているようなソースをスプーンにすくい、ひとさじ、ふたさじとかけていたのも、実に旨そうであった。仲々演出効果が良い。

 

  良い店は店員の感じも良いというのが、今までの経験からの結論だったが、この店もまた、どの店員も愛想がいい。コックはイタリア男らしく(ずいぶんとフランス的になってはいるが)、ウェイトレスもどちらとも取れる顔立ちだ。もしかしたら、この店のマスターが知り合いを呼び集めて店を始めたのではないかと思うように、店員同士の間も和やかで活気に満ちている。どの人もきびきびとよく働き、よく動くわりに客へのあたりもやわらかく感じが良い。メニューのひとつひとつもいちいち店の工夫がされていて、客を驚かせ且つ楽しませている。

 

  アイスクリームを頼んだ薫の後ろのおばさんは、あまりの見事なパフェに驚いて、しばらく眺めているなりで手をつけなかった。冷たい水を持ってくるというのも良いアイディアだ。とにかく一つ一つにいろいろな気配りがなされているのが感じられた。

 

  薫は早速カメラを取り出して、コックを取ろうとしていたら、彼はことさらびっくりした顔をして、ちょっと待てといい、(長い棒の先にピザを乗せたまま)壁にかかっていた麦わら帽をひょいとつまみ、頭に乗せて写真におさまった。笑顔の作り方が平野くんに似ている。瞬時にひょうきんな顔を作るところなど、大した役者だ。店頭のデモンストレーションにはうってつけの人物だと思った。ブロシェットは仲々評判もいいようで、運んで言った周りの人たちからも注文が来ていたようだ。とにかく値段が少し高めなことを除けば、(でも高いと感じさせないほど、他の点でカバーしている)とてもよくできた店だとえらく感心した。こういう店に入った後は、本当に気持ちがいい。

 

 

  宿に帰り、最近洗濯物がたまっていることを思い出し、下着、靴下、Tシャツなどを洗った。熱いお湯がふんだんに出るのでありがたい。くるみはついでに髪の毛もひとりでカットし、洗髪もしてしまった。薫は湯で身体を拭き、ひげをそり、足を洗ったりして、この1泊2120円の宿を大いに利用させてもらった。こんなに使えばホテルもかえって安いものだ。