11月10日 汚い便所体験

  この船は小さいためか、エンジンの音が響くし、少し揺れもある。薫はよく寝たといったが、くるみは振動で頭が痛く吐き気がした。

 

  朝食兼昼食のサラミサンドを食べてのち、薫が両替にゆく。1730Dr(はした金はジュースを買うために全て使い切った)を1300+30と打ち間違えたのだか、何故か交換レート17を2回掛け算し、かなり多いリラが返って来た。

 

  このとき、窓口では1Dr=17リラと大きく表示されていた。これを×17×17としたのだ。しかし結果があまりに多いので、1桁ずらして×17×1.7分支払われたのだ。これでは、1730を1330と取り違えられてもかなり得だ。尚且つ、支払われた金を数えると、1000リラ少ないと思ったので、その旨要求すると、Sorryとギリシャ人が英語で謝ってすぐ払ってくれた。しかし、数え直して見ると1000リラ余り多かったのだった。1840円の得。こんな甘いことでええんか。

 

 

  この前後かに薫が便所にゆくと、便器や壁にうんこがなすりつけてあったので、努めて接触しないようにした。何と、その前にはシャワー脇のハチの巣のような排水口に正常なる中年男性がしゃあしゃあと小便をしていた。そのとき隣の便所には誰も入っていなかったのに。空いていたのに。そのシャワー室兼トイレットの床にはいつも何がしかの液体がたまっていた。

 

  ちなみに、くるみも薫のように欧州の便座には、まず拭き、紙をしいてから座るらしい。くるみは最近紙を敷かない、と言った。薫は敷いている。(でも、くるみは綺麗な便所でしか大をしないことにしている。列車でするとき、汚い時は小便も尻も持ち上げてする。)薫の知恵を披露すると、水が跳ね返りそうなときは、紙を水に浮かべてからうんこを落とす。

 

  2:00頃、船はBRINDISIに着いたのに、仲々下船できず、2時間近く船中で待った。イタリアの労働者がストライキをしている為也。予定より1列車遅らせることにする。BRINDISIのカスタムでは、例によってほとんどチェックがなかったが、バックパックに黄緑色のチョークで×印をされた。(くるみはパスポートも見られない。)

 

  駅まで歩き、ホームにてビールを買う。このとき、ビールで700リラというのがあり、それを買おうとしたのだが、買ってしまった後で聞いたら、それは瓶入りので今ない、ということだった。BARIまで約1時間、疲れたのでPensione Serenaに宿をとろうと行ってみると満室だった。

 

  Teresaが泊まったPensione del corsaを目指し、くるみが行ってみると鍵かけにたくさん鍵がかけてあるので、望み有りと思う。呼ぶと大きなシェパードと疑り深そうな顔をしたおばさんが出てくる。そのあと、気の弱そうな、しかしせこそうなおっさん。13500リラで部屋があるということなので、引き返そうとすると、10リラを5枚くれた。エレベーターに使えということらしい。小銭がないので、あとで返すことにした。薫と戻って来て部屋に案内してもらう。ダブルのベッドなので、ツインに替えてくれというと、怪訝そうな顔をした。が、くるみが薫を指差して寝相の悪いマネをして見せたら、了解した。カウンターに行き、金を払う。13500リラ。(14000リラ払って500リラ釣りをもらう)エレベーター代をとらないので不思議と思うが黙っていると、薫がやってきて部屋に13000リラと書いてある、という。薫が交渉するが、10月からサービス料を15%とることになったと言い張る。もう払ってしまったあとなので仕方ないと思い、夕食にゆく。

 

 

 

  例のオステリーアへ。ここでは誰もがコース料理を食べることになっているらしい。スパゲティポモドーロとカラマーリフリトスを注文。ビノロッソ1Lもとる。近郷の在の人がオーケストラのマネをして、1人が指揮者をしていた。彼らが店を出るとき(我々は入口に座っていたのだが)、私たちと握手をしたのがきっかけで、誰もが店を出るとき握手をすることになってしまった。いい気分で退散。大衆食堂で客の合唱を聞いたのは初めてだ。大きな声が洞窟の中で響いていた。最後の客が店を出るときに表から写真を撮った。

 

 

 

  アパートに戻り、エレベーターに乗っている最中、興味半分で中扉を開いたら、途中でエレベーターが止まってしまった。これにくるみは激怒した。(ちがうね。薫がちっとも悪いと思っていないから怒ったんだもん。)

 

  エレベーターは宙づりにされたまま、扉の下方ではインドかトルコ風の住人が何やら喚いていた。動かそうにも小銭がないので動かず、外側のボタンを押してもらってもだめだった。結局5〜6人がどやどやと出て来て、1人が背伸びして金網のすき間からやっと10リラコインを入れてくれたため、エレベーターは下りた。みんなに、ジャポネジャポネと口々に言われながら、歩いて階段を登った。(これが怒らずにいられるだろうか。)

 

  部屋に戻っても、くるみはキチガイじみたことをすると罵った。