11月27日 コルドヴァからアルヘシラスへ

  10時59分発コルドヴァ行きの列車に乗るつもりで、9時半頃宿を出る。昨夜、他の

客が遅くなって帰ってきたにもかかわらず、おばさんはもう、掃除にかかっていた。

テーブルの上にはきちんと畳まれた家族の下着やタオルが積み重ねられていた。

働き者のおばさんだと思う。

 

 Sevilla San Bernardo駅にゆく。ボーディングカードをもらおうとユーレールパスを見

せて説明するが、何故かNO!NO!と言う。切符をくれない。挙げ句の果てにインフォメ

ーションに行って聞けというので仕方なく横にある四角で囲った場所にいる、あまり

親切でなさそうなおばはんに聞く。やっこさんは”英語がしゃべれるか”と、のたまい、

”あなたは何処に行きたいんだって?”というので、”ボバディージャ”と答えるが、NO

と言う。一所懸命時間を書いた手帳やトマスクックの時刻表を見せてコルドヴァで乗り

換えてボバディージャにゆくのだ、と言ってもらちがあかない。戻って薫に変わって言

いに言ってもらうと、ここからはアルヘシラス方面しか出ていないらしく時間は11時5

3分だと聞いてきた。そういえばこの駅は別名CADIZ駅で、cordova方面はCORDOVA駅

からしか出ないのだった。二等しかないローカル線なのでボーディングカードは必要な

いとの事。出発まで時間があるので、MATASのおっさんに手紙を手紙を出すため、駅左

手の郵便局にいき、速達の値段を聞いた。54ペセタ。要件は12月22日から26日まで(ク

リスマス前後)の宿の予約。モロッコから帰り、出来ればポルトガルを急ぎ足で廻り、

クリスマスはMATASの宿で落ち着いて、その後ゆっくりと宿探し(一月住む場所)をし

ようと決めたため。おっさんには後から電話で確認しとかないと。薫が文案を練り、く

るみが清書して投函。

 

  列車は夜7時頃にアルヘシラス駅に着くため、昼食用のパンを買いに。

20ペセタのペイストリーと、コッペパン型のを買い、51ペセタだという。100と1ペセ

タを払い、お釣りを50ペセタ玉でもらう。足りなそうなので、同じコッペパン様のを追

加。11ペセタだという。店を出て駅に向かって歩きながら、計算すると、辻褄が合わな

い。同じパンなのに変だと思い、引き返す。

いくら?と聞くと兄ちゃんはまてまてというように手で制して、100と1ペセタをもら

ったと、実際に出してみせた。うん、そうだとうなずくと、75ペセタをお釣りにあげた

と言うので、いいや、違う。このパンは20ペセタでこのコッペパンは11なので、31な

のに、最初51ペセタ払った。お釣りはこれしかもらってないと、50ペセタ玉を出して

見せたら、ああといい、すぐに5ペセタ札4枚を返してくれた。20ペセタのペストリー

を2個だと思ったと言い訳をする。本当に計算が苦手なのか、それとも人をだまそうと

しているのかは分からない。

 

  駅に引き返し、四、五人に確かめてから列車に乗り込む。ローカル線だが、近代的な小綺麗な列車だ。

列車だけは綺麗なあ、と薫が独り言ちる。列車の外は広大なオリーブ林が続く。

土地はうねうねと、低く高く起伏し、赤土か黄色味がかった色をしている。見渡す限り

こんな何もない土地も、意外にきれいに耕され、オリーブが植えられたり、畑の畝が作

られたりしている。雑草が生え、草木が勝手放題生い茂っているところはほとんどな

い。急に岩が隆起したようなところもあり、不思議な光景なり。スペイン人というのは

実は働き者なんだろうか!?雲はだんだん垂れ込めて来、流れも飛ぶように速い。

遠くのほうでは、雨が降っているようでもあった。

 

  薫はお腹が空いたというので、買ってきたパンを食べる。フランスパンの旨さとはまた違うのだが、皮が特においしい。中は真綿のように柔らかく、且つしっとりしている。皮はカリッとして粘りが有り

適度な塩味。ちょうど神戸三ノ宮のみすずのパンに似ている。特筆すべき旨さなので、手帖に店の名と住所を控えた。Sevilla San Bernardoの駅を背にして歩き、左に曲がり、すぐ又右に曲がったところの

二軒目。barの隣にあるパンや牛乳、チョコレート、プリンを売っている店。プリンも自家製なのか

それぞれまちまちま容器に入っており、うまそうだった。お兄さんが計算に弱いのが難点だが。2人で

うまいうまいを連発し、バターを付けてあっという間に全部食べてしまった。

うまいパンには飲み物も必要ないくらいだ。

 

  途中、雨が降ったり止んだり。7時40分にアルヘシラスに着く頃には止んでいた。

駅のホームに降り立つと、流石、港町だけあって色々な顔、人種の人々が見える。

本を頼りに安宿街へ。お兄さんがペンション代、800ペセタときたが、高いと言うと、700ペセタと

値を下げた。まだここの相場も分からず、以前のローマのようなしんどい思いも嫌なので

断った。

  安宿街はすぐに見つかったが、いざ聞いてみると、みな800以上と高い。

だいたい800が相場のようだ。

 客もいないのだから、下げればいいのに。

 

 あるホステルで値段を聞いて出てきたら、そばにたむろしていたおっさんが付いて来て

自分のホステルを紹介した。750ペセタで風呂無しと言うが、高い、と言って別のところへ。

生憎、一杯だったり高かったりで、又引き返してくると、戸口でさっきのおっさんが

幾らか安かったかと聞く。薫が負け惜しみで、安いよ、barato と答え通り過ぎようとしたら

ちょっと待てと呼び止めた。700に値切ってみようと、引き返すと、風呂付きで800.風呂、バーニョ

は要らないと言うとやっと700ペセタになった。いちいちエネルギーがいる。

部屋を見せてもらうが、中庭に面したまあまあの部屋。

全体にこぎれいにしているので、オーケーした。

ペンキの匂いもしていないし。

 

  夜はそのおっさんに教えてもらったRestaurant Alfonsoへ。

道路に面しただだっ広いバラック建てで、ぱっとしないが、値段に惚れて中に入る。

300ペセタのメニューを取る。これは、1、2、3とあるグループのある中から、各々

どれでもひとつづつ選ぶ方式。

高い品も安いのもあるのにどれでも同じ値段。これには飲み物、パン代が含まれる。

薫は、ポテトシチューと、じゃがいも入り卵焼き、プリンと、500ミリリットルの赤ワイン。

くるみは、shellfish soup とポークチャップ、カリフラワー炒め、ビールにアイスクリームを

頼んだ。どれもまあまあの味だが、頼み方によってはボリュームが有り、たいそう得になるようだ。

 

  第一グループでは、薫のポテトシチューか、パエリヤがいいか。あまり期待は出来ないが、

腹は膨れるだろう。

 

第ニグループは、やはり肉が良い。鶏か豚か、そのあばら肉。

デザートはどれも期待出来ないが、果物が安全である。

飲み物は、ワインvinoがお得だろう。

 

今回、薫がお勧め料理を聞いたのは失敗だった。

どこでも通用しないことがわかった。