11月26日 セヴィージャにて

  9時頃目覚める。久し振りによく寝た気がする。薫は、昨日トラベラーズチェック

を人に貸す夢を見たと言う。その代わりに洋服をもらったらしい。洋服にナンバーを

振って担保にしたので、机の上に洋服の山が出来た。物欲の現れか?

 

 くるみは人につきまとわれて追いかけられる夢を見た。周りの建物は、メスキータの

寺院やドウオモのように大きく、扉も高く厚い。出て来る人物は、日本人だが、まわり

の風景は少しずつ西洋風になってきたような気がする。

 

  昨日買ったビスケットとショコラ(スペインでは、LECHE CON CACAOという、

カカオ入り牛乳なり)の残りを食す。SEVILLAにはもう一泊するつもりだが、この宿の

おばはんが何となく気に入らないので同じ値段でもほかの宿の方がいいと思う。だいた

いトイレの様子やトイレットペーパーでも客に対する気持ちが分かるようだ。

ここのはボールペンで平気で字が書けそうなくらい固い紙だ。痛くて仕方ない。最初

外国に来てこのようなペーパーを見た時、こういう紙を皆使っているのかと思ったが

そうではないことが徐々にわかってきた。何でもきれいに趣味的にやる宿や、家族と同程度の扱いを客に対してしているところでは、一様にふつうの柔らかいトイレットペーパーだ。部屋はマシで、見た目に綺麗にしていてもペーパーがなかったり、固いへんな

紙をおいているのはあまり客の立場で考えていない気がする。

 

  というわけで、ホテルリストをみて場所を教えてもらいにインフォメーションに行

った。昨日の無愛想なおばあさんがひとり居て、面倒くさそうに無言で地図に印をつけ

た。2回目にもうふたつ他のホテルを聞いた時には少し顔もほころんだが、やはり、

あまり親切ではなかった。幸せな人生を歩んでいないのかもしれない。

 

  地図をみて歩き出す。途中でBarに寄り、トーストとカフェ・コン・レッチェを食

べる。昨日泊まった宿の近辺とは全然違い、ビルと舗装された道が続く。

 人に聞き聞き、第一候補の、Hostel  Maragaにゆくと、今はやっていないと言う。が

っくり。

 よし次に行こうと歩き出し、おっさんに教えてもらった道をゆくと、似たような名前

のところが見つかった。早速入り、部屋ありますか、二人部屋、風呂なしというと、

白衣を着たおっさんは驚いた顔をして、”ここはHostelではないよ”といい、次にそばの

部屋から出てきた人に、わはっはと笑って、部屋ありますかと言われちゃったよと、言

われた。早々に謝って退散。そこから100メートルほど行ったところで、やっと目的の

ホテルを見つけ値段を聞いたら、800ペセタの部屋しかない、と言ってから、いっぱい

だと、言われた。インフォメーションでもらったホテルリストの当てにならないのに

腹をたてる。いろいろ部屋を見るたびに値段を聞いて歩くが800ペセタを下らない。

ここの町ではもう安ホテルはないものと諦めて、昨夜あたった双子の子供のいる

Hostel Residenseに泊まることにする。やはり、800ペセタだったが、ベッドがしっか

りしているのと家庭的なホステルなので決めた。

 

  昼食を、昨夜のCasa Diegoで摂る。宿のおっさんにおいしくて安いレストランを聞いたとき、またしてもこの名前を挙げ、他の店は紹介してもらえなかったからだ。

薫は昨日と全く同じメニュー。くるみは、ガスパチョ・アンダルースと、ウエボ・デ・

アラ・フラメンカ。ガスパチョは確かに夏のスープで、酢とトマト味の酸味が効いてお

り、ピーマンの味もする。至極さっぱりしたスープだ。酢が強いため、あまりたくさん

一度に呑めない。量が多いため、なかなか終わらなかった。

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  このあと、アルカーサルへゆくが、3時まで開かないので、散歩。マリアルイサ公

園と、スペイン広場にゆく。公園では昨日インフォメーションで出会ったオーストラリ

アの青年(イギリス人的な)と会う。薫が大きな声で、"How much is the hotel you

stayed?"と呼び止めると、笑って二人部屋800ペセタのところを675ペセタで泊まった

と言う。彼はスペインにあと2泊したのち、モロッコに渡るそうだ。前に一度行ったこ

とがあり良かったため。スペインとは全く違う文化で、危険なところもあると、カメラ

を手で抱えてみせた。良い場所を3、4箇所教えてもらう。南モロッコがよいとの話だ

った。

 

  この公園は規模が大きく、大体は整備されているのだが、道と道の間が密林のよう

になっているのが面白い。陶製のベンチなぞある。スペイン広場は正面の弧を描いた

建物にも絵付けされた陶板が多く貼り付けられている。

 

  アルカーサルに入る前に、バールに入り喉を潤す。香ばしくて旨いカフェ コン レッチェ。ここの店は三軒あったバールの中で一番正解で、客入りもよかった

。60ペセタなり。アルカーサルは、ふたりで200ペセタもとるので、一所懸命絵をかい

た。日が陰ってきたせいか、冷え冷えとして寒い。コルドヴァのアルカーサルより大規模。

庭はこちらの方が少し手入れされているが、オフシーズンのため、完璧ではない。くるみも薫もコルドヴァの方を好む。

庭中央の建物の中に噴水があった。噴水のためだけに作られた家である。しかし、その

噴水もどの噴水もただ水が一筋天に向かって噴き上げているだけのシンプルなもの。家の外側は奇妙な模様のタイルが貼り付けてあった。これも写した。

木のラッパを吹いているお化け山羊。口やお尻から葉っぱを噴き出している不気味クマ。

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ある噴水では、水の垂れる細い鉄か真鍮の管の先が小さい犬の顔になっていた。

壁の模様を描いているうち、cerado閉館の時間になったので、門番が呼びにきた。

ふたりで走って表へ出る。出ると後ろで扉が閉まった。

 

  道を歩いている”賢そうでまともそうな女子学生”を呼び止めてと、薫がくるみに合

図を送り道を聞いた。二軒聞き、色々検討した結果、300ペセタの西英・英西辞典を

購入した。espanol ingles diccionarioという。

 

  このあと、EL CORTE INGRESという百貨店にゆき、調味料入れを見つけた。

これはステンレス製で、キャップを回すと穴が塞がったり、開いたりする。形もスマートでコンパクト。

レストランを探しながら、結局、CASA DIEGOに舞い戻る。この街では、CASA DIEGO

のように安いところか、全体にすごく高い店とふた通りしかなく、他の中途の値段を付

けている店には期待が持てそうになかった。

ensalada con dosと、caramali fritos,pollo ensalsaそれに、vinoを一杯ずつとる。

久し振りに野菜を食べたようでおいしい。ありきたりのレタスやトマトなのだが。

イカリングも歯切れよく揚がっており、とてもまし。

くるみが頼んだ鳥もものスパイスソースはとりわけ旨かった。いく種類かのスパイスが

混合されているのだが、詳しくないのでこれと言えないのが残念だ。

カレーに似て非なるもの。スペイン料理というよりパキスタン料理という感じだとは、

薫。匂いもよく、鶏もよく煮えているため身離れがよい。

薫は悩んだあげく、同じものと、パン、ヴィノを追加。

勘定書がまた間違っていたので、言いに行く。青年は、ふーとため息をついていたとか。

三回はいったが、2度が一番乗りで、2度勘定が間違っていた。ぼるためにやったのでは

ないらしく、とことん計算が苦手な人のようだった。

この店はいい味を出し、客の入りも上々。コックは意外に若い。この計算の弱い青年と

顔が似ている。兄弟かもしれない。

宿に戻り、これからの予定を考える。おそらくはモロッコへ。