番外編 安宿の気配をいかに知るか?

  何軒も安宿をめぐっていると、次第にその街の相場がわかってくる。そうすると、値段ごとの違いも次第に読めてくるように思う。

 

  それはまず玄関の外観から始まって、階段のつくり、壁の張り紙、人の応待、部屋に入ると特有の臭い。シーツの張り。部屋の形状、家具の配置に至るまで様々な違いが見られる。造りや内装の良し悪しは言うまでもないが、ホテル側の応待は一般に安宿になるほど横柄になる。愛想を作るということをしない。ひどいときには客を邪魔者扱いにする。客がくることを嫌がっているのではないか。

 

  それにもうひとつ。水が永らくたまったような湿気たすえた臭いがうんと安宿ではすることがある。いの一番にパリのステラ。こういうところはメインテナンスに問題があるので避けるにこしたことはない。

 

 

  一応今のところは、まず清潔さ、2番最低限の安眠を基本としてホテルを選んでいる。

  そこでポイントは床や壁の清潔さであり、シーツの表れた新しさである。趣味のまともそうなところが表われていればまともだと思うが、安宿でそういうところは見られない。錯覚を与えるためか、受付周辺だけ小ぎれいにしている場合もあるので注意が必要である。

 

  ここの宿はその例であり、受付から想像されるよりトイレはすさまじいものだった。最後にチェックポイントをあげると、

  1. 通りから見た姿(玄関・看板・レタリング)
  2. 階段及び受付のつくり
  3. 部屋に向かう階段と廊下の造りと幅
  4. 部屋のレイアウトと内装
  5. ベッドのつくり(安眠性)とシーツの新しさ
  6. トイレの清潔さ

補助的に、7.部屋で温水が出ればなおありがたい。

この中で1はもちろんのこととして、やはり5のシーツの新しさと6は最も重視したい。(以上、薫)

 

  最近、くるみは部屋に入る前にだいたいのことは見当がつくようになってきた。

その判断の基準は薫も書いたが、宿主の感じ。愛想がないというのは客に尽くす心掛けがないというのに通じて、たいていはシーツなど取り替えていないところが多い。なぜわかるかというと、色が変わるまでいかなくとも、毛布カバーに無数のシワがよっていること。手で触ってみて、なれた感じがすること。匂いを嗅いでみて他人の汗の臭いがすること(これはもっとも酷い)などによる。

 

 

  部屋にたどり着くまでの薄暗い階段を目を凝らして見て、埃のたまっているところも手入れが行き届いていないことが多い。目立たぬよう薄暗くしてあるのか。ベッドカバーの色にも注目している。何故なら濃い色のカバーは汚れが目立たぬため、綺麗にしていずともわからないから。安宿はダークカラーのベッドカバーが多いようだ。

 

  部屋の灯りが暗いのも難。枕もとだけで洗面台の灯りなど壊れて点かない場合も多い。壁紙の張り具合(あるいはペンキの塗り具合)、床板などにもよく表われている。安宿は多くがリノリウムかPタイルの床だ。

 

  かけてあるタオルも(ないところもある)判断の要素(助け)になるかもしれない。最後に宿の泊まり客。得体の知れない人が階段に座って呆然としているのは避けるべし。安宿の客は無愛想な人が多いようでもある。