12月3日 金曜 ぶっ飛ぶ濃厚都市 マラケシュ

  8時20分発の列車でマラケシュに向かう。よく練れた…シーツ、波打つベッドではあったが、結構よく眠れた。住めば都か。相変わらず、乗客には兵隊が目立つ。

今日の列車は二等かとたづねた程、一見綺麗な車内だった。枕カバーの白と、カーテンの水色のせいか。

  しかし、よく見るとパリッとはしていない。全てリクライニングのはずだが、倒れるのとそうでないとがいる。

およそ全ての座席が進行方向に向いているので、余計な方に話し掛けられずに済む。

 

  座席も比較的楽だ。休んでいると、ハッカ茶売りおじさんが2人やって来た。

片手の籠に、ナマのハッカ、ハッカと砂糖をほり込んだコップ数個を入れ、もう片方の籠には

魔法瓶がふたつ寝かせてあった。

  薄荷の、つまりミントの葉が新鮮な鮮やかな緑色をしていて、直接お湯を掛けて飲むところが目新しい。

 

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  角砂糖は長方形のが3つも入っており、ハーバードの学生から聞いた、

ロッコ人がすこぶる甘党だ、、、というのがうなずける。

 

   窓外を見ると、海岸沿いの北モロッコと違って、土地が随分と痩せているように見える。

土の色もそうだし、緑も少ない。いや、緑はあるにはあった。

豪快なサボテン林があった。暗闇に出歩いていて刺されないものか。

  南に下る途中、赤土で出来た山や谷や河がうねって、延々と続いていた。

  なるほど、これがアフリカか。

 

  北のほうでは、オレンジ畑が見られ、思いの外、作物が取れると思っていたが、少し南では

違った。

  空はとにかく青い。スクリーンに均質に抜けるような青を映し出したように、平面的に見える。

立体は、緩やかに起伏する赤土の山だけ。

  少しあった耕地では、ラクダが鋤を引いていた。襤褸をまとった羊飼いの少年は

列車が来ると、手を振っている。

 

  マラケシュの手前の駅から、徐々に建物が多くなり都市に近づく。マラケシュには突然着いた。

 

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マラケシュ旧市街

  慌てて荷物を降ろす。例によって客引きが何人も来る。

まず、無視して、それで駄目なら、立ち止まって大阪弁で追い払う。しばらく歩いた路上ではあんまり腹が立ったので、モロッコ人の腕を掴んでやったら、慌てて

“Don,t. Touch  me.   Go. Away!  Paka   パカ!“と言って、自分から立ち去っていった。

パカは、日本語が、アラビア語か分からないが、どちらにしても迫力のない声だった。

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    Office National. Morocain du Tourismに行ったが、大きな木の扉は閉ざされ、休みだった。

となりの売店の爺さんに聞いたら、別の人が、3時に開く、と教えてくれた。右手にいた男は我々が売店に行くと、さっと握手を求め話しかけて来たが、あっさりと無視した。

  見知らぬ人間がいきなり握手を求めるのは、ひょっとするとこちらの習慣かも知れないが、どちらにせよ慣れないことはしない方がいい。

 

  2人で荷を背負ったまま、宿を探すが目星が全く付かない。学生3人連れが通ったので尋ねると、近くの 、良くて高くないホテル❗️を教えてくれた。

 

  いかにもホテルらしい造りで、お国の特徴を出そうと心掛けているのか、外観は少なくともなかなか雰囲気がある。窓の鉄格子が異国的な模様を形象どり、壁には、民俗調の細かな彫り物が施されている。植栽にも手入れが行き届いている。

  粘ってツインルームも見せてもらった結果、ツインに決めた。

  受付の小柄なオトコが少し横柄で、朝食込みだと言った態度は癪に触ったが、

バスも珍しく付いていたので、ガマンする。

 

   レストランを探すが、高いところしか見当たらない。セットメニューで、40ディラハムも取る。

行けそうだ食べられると思って入ってみると、甘菓子しか置いてないCAFE だった。

パイ状のものは何かと聞くと、アーモンドだと言うので頼んだが、恐ろしく甘い。中に

アーモンドの粉を砂糖で練ったものが入っている包み揚げ菓子で、油も砂糖もふんだん過ぎる。

固くて甘くて、流石にくるみも残した。ここのにいちゃんにスナックを紹介してもらった。

 

  やっと見つけると、小綺麗なスモークガラスの入ったCAFE だった。

メニューを見ると、随分高い。薫はブロシェットのサンドイッチ、くるみは間違えてPOMME  FRITTESを頼む。オレンジジュースも2杯。何とか腹を満たす。

 

  途中、トレーナー売りのオッサンにスナックの場所を聞くと、別人を呼び止めてくれたのだが、それだけでチップをせびられた。しかし、即座に、NO!と言って断り、くるみもSorry と言って2人とも知らん顔をした。

 オッサンは後を振り返り振り返り歩いていったが、同じスナックに舞い戻り、またトレーナーを売りつけていた。

  思い出したが、ここのスナックでくるみが、POMME FRITTESを指して、字が読みにくかったので、9?とボーイに聞いたら、ボーイが何かもごもご言った。

  勘定をする段になり、紙とペンを持って個々の値段を聞きに行くと、やはり、9、と書いたので即座に、NO!と言ってメニューを指差し、3、と言った。ボーイはしばらく詰まり、それから思い出したように、3と書き直して合計した。よし。20ディラハム。

素早く払って素早く出る。いちいちエネルギーが要る。

 

  一旦、宿に帰り骨休め。午後3時半、インフォメーションに行き、ホテルを聞く。

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インフォメーション室内

高いのか、無愛想なのかしか教えないのが、のちの調査で分かった。相場70ディラハムから。

  インフォメーションの感じは悪くなかったが。近くの銀行でトラベラーズチェック150ドル分をモロッコ通貨に代える。凝った造りのきちんとした銀行であったので、一応安心した。

レートもそれほど悪くない。何より係員の態度が事務的で冷たいのが、嬉しい。

べちゃべちゃやたら愛想のいいのに、ロクなのが居ない。

  多分アメリカ人だろう男女2人連れに会ったが、2人とも恐ろしく真面目な顔をしていて、話し掛ける隙もなかった。

  薫の眼には、女性の方が相当、チビっているように見えた。そう言えば、モロッコを旅している白人たちはみな一様に肩を怒らせ足を開き眼を見開いてやぶにらみで歩いている。

みんなちょっとびびっているのかなぁ。

 

  おしっこに行きたいが、変なところに立ちションをして処刑されると困るので、ここは我慢した。

 

   メディーナMEDINA の入り口に当たる中央広場に向かう。ここまでは全然客引きもいなかったが、ここに来て一人の少年が話し掛けて来たのを皮切りに、それを突き飛ばすようにもう一人来て、直後二三人が周りを囲んで歩きながら一斉に客引きを始めた。

 

  何とかかんとかが5ディラハムとか言ってたが全然耳を貸さず、それでも五月蝿いのでひとりに向き直り大阪弁でお引き取り願った。後ろのほうでののしる声が聞こえた。GO AWAYと言っていたようだ。

  ここの広場は土人の宴会のように太鼓やら喚き声やらがひとつのオーケストラのように、わんわんと響いていた。

人の数もやたら多く、皆真面目な顔つきをして行き交ったり、大道芸人に見入ったりしている。一目瞭然柄のよろしくなさそうな御仁もこの辺りに集結している。

  途中の公園では女子供が日向ぼっこか、集結していた。

大道芸人の中には、コブラを脇に坐らせた奴腹やら、盲目で琵琶のごときを弾く輩やらがわんさと居り、皆違う人の輪を自分の周りに作っている。

 

  牛は催眠術にかかったように眠りおり、牛の口には麻薬のごときをプカプカ

と咥えさせているのもあった。牛は眠ってからだを硬くしたまま、ごろりと

横倒しになったままである。

あまり芸が無さそうなのに、とりあえず何か話し、数人の人が立っているだけのも

あった。ここではミカン売りまでが客に声を掛けてくる。何気なく積極的な人たちだ。

 

  革製品の店の前では、靴を取り変えろとか、服を取り変えろとかいうのがいる。

空手の真似をして、薫の顔にタッチして来たのもいた。藁で編んだバッグは、5ディラハム(約200円)だった。ミカンは一個1、5〜2ディラハムと意外と高い。

ほかには、エスカルゴというより、かたつむりの細かいのを煮て食べさせる店もあった。よく売れる店では、そのブリキ台の上にかたつむりの殻がたくさん積もっていた。

 

  体重計を前に置いて、ひたすら黙って座っているおっさんもいた。

これらの店の周りや人の輪の周りを小汚い格好をした子供達が駆け回って遊んだり

金をせびったりしていた。ひとりは金をせびって頭をはたかれていた。

 

  帰りがけ宿から五分のカフェレストランに入る。ブロシェット11本、ビール1、

コーク1、ミニハンバーグ5、おまけでパン、ポテトフライ、トマトと唐辛子のたれ。

 ブロシェットは結構旨かったのだが、勘定場でトータルを聞くと、辻褄が合わない。

おっさんは英語のわかる男を連れて来たのだが、どうもこちらに分がある。

しまいに、おっさんはフリットだ、パンの金だと言い出したので腹を立て

金をテーブルに投げ出し、ペンを取り戻して立ち去った。

  くるみは後で仕返しされるのを心配していた。

マラケシュに今はふたりしかいないんだから、そら心配するわ。

1、5ディラハムのことで、それも日本人に分があるかもしれんのに、誰が狙うかと

薫は思った。

  洗濯して眠る。期待した風呂は湯が出ない。

薫がくるみの顔をみて一言。永い事住んでるような 池の鯉。お粗末。

  随分お風呂に入ってないからなあ、無理ないわ。

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