2月21日月曜日 半開きの市場、日本人のおばちゃんに会う

 

10:00起床。朝食を終えて市場へと急いだが、どうした訳か、市場の中は薄暗く、多くの店がcerradoである。魚屋も貝屋もほとんど店を開けておらず、かろうじてこの間、sopa用の魚を買った店にてpara sopa de pescadoと言って、サメのような魚1尾、うなぎに似た魚(今日のは太くて長くて40cm以上あった)1尾、それに大きな魚の頭1つ買う。高くて290pts。この間のは500g175ptsだったのに、gram数が多いのかもしれないが。店はこの間の美少女ではなく、その姉くらいの、割合に綺麗なセニョーラと、その旦那さんらしい、目の鋭い男とでやっていた。いつもムールを買う、愛想のいいおばちゃんの店は閉まっていた。人参、辛くないピメントン、洋梨、マッシュルーム等々買えるものだけ買った。香辛料屋で待っている時、突然日本人のおばちゃん(くりくりパーマにメガネをかけた)がやってきて、初対面なのに早口で矢継ぎ早に質問を浴びせかけた。

以下はその大要。

おばさん:来てどのくらいになるの?

薫:いえ、もうすぐ帰るんです。まだ2ヶ月ですけど。

おばさん:あら、もう帰っちゃうの。それでどこに住んでるの?この近く?

薫:(とまどいながらくるみにどこだっけ、と聞き)カメリエスです。

おばさん:あら、じゃ、グエル公園の近くね。やっぱりガウディ関係?

薫:いいえ。

おばさん:いえね、私ここに15年住んでるんですけどね、この市場で日本人の人に会ったのは、前1回女の人に会ったのね。でもその人は1人で来てたの。今日はまた二人で来てたから珍しいなーと思って見てたの。二人で来てるの見たの初めて。

二人:そうですか

…………

 

くるみはこの時順番が回って来て、香辛料屋のおばさんに注文している最中だったので、おばさんの話にかまけていられなかった。上のは、その合間に漏れ聞いた薫とおばさんの会話。しかし、よくまあ回る舌とせわしない喋り方と、異国の地にあってもなお、日本のおばちゃん的雰囲気が薄れないものだと感心してしまう。くるみはあまりにも自分のことを喋らずに、他人(それも初対面)のことを聞きたがるので、何か影に悪い男がいて、所番地を教えると乗り込んでくるような懸念に襲われたので、あまり話さずにいた。いつもは他人の押しに強い薫も、突然だったのでびっくりしたのと、おばちゃんのすごい勢いに押されてへどもどと受け答えしていた。さっき書いたように、おばちゃんはこのバルセロナ15年住んでいるそうで、ガウディの案内(日本人向け)をしているとのこと。下がり気味の補足落ち着いた眼と黒っぽいメガネ、おばちゃんパーマ、ださいオーバーコートと、とってもよく回る舌を持っている。我々を見て、「二人見たのは初めて」というけれど、動物園の「白ゴリラ」を見た訳じゃあるまいに。見世物じゃないぞ、と後からいろいろなことを思うが、そのときはただもう圧倒されて呆然となるばかり。きっとこの人ならどんなところでも生き抜いていけるだろうと二人で驚嘆した。モロッコでも大丈夫に違いない。たぶん旅行中会った日本人の中でベスト1の迫力の持ち主だろうと思う。さて。おばちゃんのことはこれまでにして、先程途中になってしまった市場の話を。

マッシュルーム・洋梨などを買う店で、「今日はfiestaか?」と聞いたところ、そうではなく、多くの店は休みの日で、うちは◯曜日が休み、ということだった。それから他の多くの店が休みのため、客があまりこないのか、どこの店の人たちも皆愛想なく疲れたような風だった。香辛料屋のおばちゃん然り。この後、いくつか開いているTOCINERIA(干し肉屋)にてハム、ベーコンを買う。ベーコンの値段表が薄く消えていて4?0となっていて、てっきり400/kgだと思っていたので、合計が違うと言ったら、ここの、立ち上がった熊のように大きなパーマ頭のおばんが凄まじい顔をして、紙に内訳を書いた。くるみがわかった、わかったと言ってもなお且つ「No!」と言って引き続き計算を続け、勝ち誇ったように計を出した。わからなかったから、ちょっと言っただけなのに、人間ができていない奴だ。今度からちょっとでも感じが悪かったら絶対買ってやらないぞ、と思った。我々がアパートに向かう頃は通りの店屋も閉店しているところが多かった。アパートに戻り、受付のsenorに「昨日たくさんの間違い電話があった」と言ったら、焦った時によくするどもり声で、「土曜と日曜、ここに人がいなかった」ような意味のことを言った。ちょっとうんざりしてるふうでもあった。残り物退治の策で、小麦粉、キャベツを使う牛ひき肉入りお好み焼きをやった。以下はその要領。

お好み焼き〉

  • 材料◆

  牛ひき肉200g/キャベツ葉4枚程/小麦粉200g/1//胡椒/

  • 作り方◆
  1. 小麦粉と卵・水を合わせ、牛ひき肉を加えてよく混ぜ、胡椒する。
  2. ①に千切りキャベツを混ぜる。
  3. よく熱したフライパンに多めの油を入れ、少なめの②を入れ、ひっくり返して薄く平らにつぶす。
  4. よく焼いて、ソースをかけて召し上がれ。

食後は洋梨を食べ、CCLを飲んで訳にとりかかる。といううちにまもなく4時過ぎになったので、外出の仕度をする。

もうそろそろ帰国便のリコンフォームをせねばならぬので、イベリア航空へゆくのだ。今日はどうも厄日のようなので、イベリアでもあの、しょうもないおっちゃんになる可能性大。あのおっちゃんになると、スムーズにゆくものもスムーズにいかぬように、もう我々は信じ込んでしまっている。どうにか避けたいものだ。MetroPasseig de Graciaにゆき、イベリアに行くと、結構順番待ちの人がいた。あのおっちゃんもさかんに仕事をしてるふりをしている。我々は04番だったが、あと一歩というところで、なんとかひげおでこのアニマルおじさんになった。願っていた甲斐あり。リコンフォームはあっという間に終わり、OK。なんとなく心許ないが、まあ大丈夫だろう。El Corteにゆき、サッカーシャツを買う。これはくるみ用でもあり、薫用でもある。二人で試着してみて、Mサイズを1枚購入。次にPreciadosにゆき、地下でシャンパングラスを1個買った後に、パコデルシアのカセット2つ買う。今日のお姉さんはわりあいに感じよく、しかしどれもたいていbueno buenoと言って進めるのでわからなくなった。若い頃のと、リサイタルのを1つずつ。MetroにてAlfonso Xに戻る。家に戻って聞いたら、リサイタルのは何人かとの合奏で、パコだけのだと思っている我々には少し拍子抜けの感。しかし、2面の速い曲はよし。若弾きのは全然未熟なところなく、すでに老成したようなふう。どちらもさすがに下手でないので、きっと聴きこむと良さを増すだろうと思う。

夕食。

スパゲティボロネーゼ〉

  • 材料◆

玉ねぎ1/2/人参小1/vino1/4カップ/トマト3/ナツメグ25g/ベーコン50g(本当は25g)/セロリ1()/パセリ/パスタ/塩コショー/バター25g/マッシュルーム100g/干しきのこ12g/油大さじ2/にんにく1

  • 作り方◆
  1. みじん切りの玉ねぎ、にんにく、人参、セロリをバターと油で炒め、茶色くなったら大切りのハム、ベーコンを加える。
  2. 次に薄切りシャンピニョンと水につけて戻した干しきのこを加え煮て、赤ワイン、パセリ、塩コショーを加える。
  3. ワインのアルコールが蒸発したら細かく切ったトマトを入れる。
  4. 1時間ほど煮て、茹であがりのパスタにかけてできあがり。

 小麦粉がなくなった為、トマトの前に入れるのを省いた。

  • 反省◆

ソースの塩加減多く辛くなった。先程気づいたのだが分量よりハム・ベーコンが多かった為、塩気が勝ってしまったらしい。こういう干し肉を入れる場合、ソースで味見をすると結果的に濃いものに仕上がるので注意。

また、これはパスタの量とも関係がある。付け加えるに、パルメザンチーズがなかったことも味をまろやかにする上において不足であった。(スパゲティ用のチーズを言ったつもりなのに、おばちゃんがスパゲティそのものを包んでくれたのだった)

 

魚汁〉

  • 材料◆

魚の頭大1/サメに似た魚中1尾のしっぽ/うなぎに似た魚大1尾のしっぽ/にんにく半分/トマト2/玉ねぎ1/辛くないピメントン/その他パンにつけるにんにく/干しパン/塩・コショー/牛骨/パセリ1

  • 作り方◆

この間と違うのは、魚や野菜を濾す前に、塩・コショー、ピメントンで調味したこと。パンにつけるニンニクを片面のみにしたこと。ピメントンは辛くないのを多めに使ったこと。

  • 反省◆
  • 平たい鍋で煮たので、水をかぶる程入れたら、材料に比して水が多くなってしまった。
  • 辛くないピメントンによって色味は成功。
  • 汁に比してパンが多かった。

夕食後、また訳にとりかかる。薫はやっとパスタの本の訳を終えた模様。くるみはまだ1章も終わっていない。明日の材料がないので、また市場へ行かねばならない。

 

《追記》

パコデルシアのテープを聴いてみて、11本ずいぶん違うのに気づいた。今度買った2本も含めて、ひとつとして同じ感じのものがない。地味だと思った合奏のものも、こちらの心を見透かしたように、2面は急に速い曲ばかり続けるなどして、そのテープごとに見せどころ聴かせどころを作っている。2面の~という曲はたぶん手持ちのテープの中でも最も速い速度で弾いているものだ。若弾きのも全然現在のと比べて聞き劣りがしない。天才は常にスタイルを変えていって、人を飽きさせない(自分を開拓する)努力をしている。