ガウディを視る 2月3日木曜日

  朝食後、10時ごろ、Catedra Gaudi(Amigos de Gaudiのある)に向かって歩き出した。いつものmercadoの前を抜けて、Via Augustaに出て南下、Avinguda Diagonalを西にゆく予定。ガイドブックではshoppingの場所としてDiagonalをあげていたが、ここは高価なものを売る店が多い。例えば、Celineという店。Augustaを曲がって少し行ったところには、陶器・絨毯類をバーゲンしている大きな店があった。これほど、大々的に安売りに徹するのは経営状態が悪いのだろうかとも思った。Wedge Wood(England)coffee set8万ペセタ(17~18万円)とあまり安くはなかったが。特に良きものなし。

 

  道路は両端と真中が歩けるようになっているのだが、うまく連続して信号がついてない上、例の通り、変わるのが早いので、とても急かされる。青で渡っても、途中までに赤に変わってしまう。Pl.Franceso Maciaを越えると、中央分離帯に松の木が使ってあるようになった。これは、日本の海岸を想起させる。松林海という簡単な連想だ。相当距離があるのだが、11:30前、少しくたびれながらもあっさり着いた。

 

  くるみは昨夜のpaellaの米の芯の硬さのせいで腹が痛かったらしい。前と同じ、はにかみながら笑みを返す妙齢の女性が鉄扉を開けてくれ、中に入れた。Amigos de Gaudiが入っている建物は、小2大1の部屋で構成され、突き当たりは教会風に、或いは燈台風に天井が丸く、高くなっている。

 

  ここにはCasa Batlloの屋上にあった排気口のために坊主頭やら塗装前のガウディ扉やらがつくねんと置いてある。床は石畳のような造りで、ちょうど中央部で靴で床を蹴ると、蹴った人にだけ不思議に音が反響する。人間が入った鉄腕アトムが歩くようなルゥン、ルゥン、ツゥン、ツゥンという未来のような音がする。

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Casa Batlloの屋上にある生き物様の換気塔

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中央にガウディらしき頭部石膏像


真中の部屋には驚いたことに、犬が4匹以上も(ごろごろ寝るので定かにならない)グデグデといるので、部屋を乗っ取られてしまったような気になる。それで1匹の目の赤い足の短い、狂人のような犬が険しい目をして、しつこく吠えるので困った。女性が叱っても依然として、我々を付け回し吠えていた。燈台風部屋を見て、真中に戻ってきた時、あざらしのような音をカサカサ立てながら歩く別の犬が匂いを嗅ごうと近寄ってきたので、くるみが頭の辺りに手をやって戸を閉めようとしたら、犬が飛び上がるように驚いたので、くるみも犬と同じようにビクッと驚いていた。

 

  建物を出て、庭から少し撮ってから引き上げる。11時を過ぎると、庭からでないとうまく太陽光線が当たってくれない。道路からでは、建物の壁面が陰になっている。このガウディの作品は全体に地味で壁に茶色いスタンプで、模様を押しただけのようなところもある。家のレンガの積み方や色合いがCasa Viceneに似ていると感じた。表の鉄扉についた龍の細工物は一見面白いが、見ているうちにすぐ飽きてくる。余りPOETRYを作っていないようだ。諧謔を生む客観的余裕というものが感じられない。脇の鉄扉についた小さな龍の方がまだよろしい。帰りも歩きで、まずEl Corte Ingresに寄り、しっかと目をつけていたドイツ製ワイン抜きと、Can paixano使用のシャンパングラス5個を購入。あちこち手当たり次第に見ていたが、これ以上のコルク抜きは見つからなかった。メッキ(スペインやイタリアのはよく剥げるので)、骨格、デザイン、機能性、detailともに申し分なし。但し、スペイン製の4倍近くの価格、千円強。シャンパングラスは隅々くるみが探しに行った。FranceArcoroc社のもの。聞いたことないが。特に、切れるようなセンスというわけではなく、親しみ易さ、堅牢性、何よりも入れたものが美味しく見えるという点から決めた。特に形容するなら、手堅いセンスが底辺に流れる気取らぬ名品というところ。市井のよき娘。中庸の精神にも通じるか。やりすぎていない奥深さ。指に優しいのは嬉しい。

 

  1時過ぎ、かなり空腹で疲労困憊しながらも、Galerias Preciadosに寄る。カセットを見たが、サラサーテFallaも良いフラメンコも見当たらず。ここはカタルーニャ広場側の店より、品数が少ないようだ。とりわけ、カセットはそうだった。さっさと帰る道すがら、DiagonalFendi Romaで黒地に茶で木彫りのアフリカ風お面柄がいくつも編まれたセーターをくるみが見つけ、いたく気に入った様子だった。店がもう昼休みなので、一旦帰り、夕方に来ることにする。坂下の安い乾物屋まできて、道ゆくおばさんに「何か落としましたよ」と教えられた。くるみが抱えたジャケットから物を落としたのだった。落とした物を見ているうち、電卓がないのに気づき、泡食って、探しに戻る。すぐ20~30m下の車道に落ちていたのを薫が見つける(くるみちゃんも見つけた)。よく轢かれずにいてくれた。よく車道に落ちていてくれた。歩道に落としていればもうなかったろう。気をつけよ、と叱る。だって貴重品いっぱい持ってるんだもん、と抗弁してきた。部屋に着いて一息入れて、beerと作り置きのいかサラダとカレー、パンを食す。らくちん。一服して、薄めたエスプレッソなど飲む。

 

  4時過ぎ、値段を聞きにFendiに乗り込む。3人の店員が皆決めた格好をしており、一人の女店員が口早にいろいろな品物の説明をした。どれもとにかく高い。目をつけた茶セーターは35000pts(7万強)だという。とても買えず、諦めて出る。すぐ側のオリエント何とかという絨毯屋にも入る。黒地に馬に乗った若者が織り込まれているパキスタンのものがよかったが、25000pts(5万強)とかなり高いし、カラチの空港の土産物屋の絨毯も思い出したので、控える。暗くなってから、本屋を見つけ入る。やはりDiagonalで芸術、社会、政治と真面目なところに多く揃えていることを、外にも表示している。くるみが行ってGitanoについての本を頼む。英語のかなりできるしっかりした女性が出てきて、「教科書だが、ドキュメンタリーでかなり面白いものだ。うちにはこれ1冊しかない。」という。パラパラめくって、しっかり書いてあるようなので購入。570pts、ぜひGitanoベルベル人(例のスツールづくりの元祖)について知りたく思っていた。日本では、その本が手に入らないと考えたのだ。写真のコーナーでは、ハーパー&ロウ社THE WORK OF WALKER EUANSという本があった。彼のはかなり見てきているが、これは見たことなかった。写真が1頁に何枚も入り、小さいが1枚の有名な写真の前後に撮った同主題のものも載せているので、Evansの思考or連想の経路が追えるようで興味深かった。中心になる写真は、大方、これまでに見たことがあるのが多かった。

 

  この本屋を出る頃から、おらは空腹と排気ガスと人いきれで、極端に疲れてしまった。口も聞かず、急ぎ足でTravessere de Graciaを通ってアパートに帰る。夜はPaella(鶏肉があるので)くるみが下ごしらえ。薫が調理。肉には、強く塩をきかせたが、鳥スープを入れた後、塩を加えるのを忘れたので、少し抜けたようなのになった。この出来の悪いフライパンで焦げないようにやることに集中しすぎ、忘れたのだ。しかし、なんとか様にはなるものだ。塩は味見すれば大丈夫で、ピメントンと胡椒の加減を追求すれば、さらに味が安定するだろう。鳥スープは最初に余りに多く入れすぎない方がいいようだ。ズハズハになるよ。TEXTの書き方も、おいおい汁を加えていくとあるみたいだ。米の固さには常に注意を怠るべからず。食後、Naranja1つを分けて食す。夢々、くるみはGitanoの本を訳し、おらは入浴したり何だかで、夜は過ぎてゆく。2時には寝よう。

 

追記;フェンディの店を見てアパートに帰る途中、信号のところで変な兄ちゃんに会った。彼は歩きながら5秒ごとに、「あっ」と言っているのである。これは薫によると、「かあっ」と聞こえるそうだ。何だがこんなおかしな人をよく見かけるが、スペインにはおかしな人が多いのだろうか。