グラナダから夜行でマドリッドへ 12月10日金曜

  目覚ましを掛けてなかったので、9時過ぎに目覚める。グラナダ はいつもそうなのか、

昨夜も雨が降ったらしく、舗道が濡れている。トイレに行った際、各部屋を見ると、もう出払っており、我々が最後のようであった。ここに荷物を置かせてもらって、11時頃宿を出る。

宿のおっさんは機嫌良く薫には握手を求め、くるみの手にはキスをした。

 

  今日は何もする事がない。教会はあまり見たくないし、朝食の後、ぶらぶらと駅までゆくことにした。

朝食はパン屋の続きのバールで。薫はtostada、くるみは旨そうだったので、bocadillo。こちらは生ハムが入っている。さすがにパン屋だけあって、ともにパン生地から旨い。これまでの中で一番旨いtostadaと褒めた。

 

  駅にゆき夜行列車の確認をして、切符を入手した。手数料はふたりで60ペセタ。

髭面の駅員のがのろのろしているので、中々長い列が消化できなかった。

公園で一服しオレンジを食べ、カテドラル脇の市場を抜けて徘徊した。全く無為な1日のようだが、今日は二人とも風邪気味の上、夜行に乗るので帰るべき宿がない。よい休憩場所はないものかと、思案する。

  しんどい上、冷えて腹がしわしわしてくる。くるみは頭が重く、熱があるようだ。

とりあえず、nuevo restauranteで昼食。昨夜の散財を埋めるべく、薫は210のメニュー、くるみは215のセットメニュー。また大好きなパエージャを食べた。薫は壁に貼ってあるメニューの内容を見て、そこに書いてあるもの全部が出てくると思っていた。400円少々しか出していない癖に、虫のいい話だ。小魚のフライとサラダしか出ない。くるみのは薄いカツにポテトフライ、茹で卵、ポテトコロッケ付き。

 

  昼食を終え、歩き始めたら小雨が降ってきた。相方男が腹が冷える腹が冷えると騒ぐので

腹が通ったにならないうちにと、ゆっくり出来そうな喫茶店を探す。どこもcerado、閉店。

うろうろしていると、日本人らしき五人くらいが大通りをバックに写真の撮りっこをしていた。RISBOAを背にして、大通りを左に行った先の角にあるGRAN BAR,CAFEに入る。ここは

立ち飲みの人もテーブル席で寛げるようになっている。コリント式か、イオニア式かは知らないが、大理石の物々しい柱で支えられた大きなだだっ広い空間である。

ボーイはきちんと黒服をまとい、蝶ネクタイを締め、腕には白いナプキンを掛けている。

cafe con lecheミルク入り珈琲も、普通のバールの二倍の値段。トイレも薫は2回、くるみは

1回使用して3時間ほどねばった。これで240円なら安いもんだ。我々が出る頃には客が2度ほど入れ替わっていた。

 

  ようやく店が開き始め町全体が起き出して活気付いてきたので、レコード屋に入る前に

Museo de handi craft(artespana)に行く。ここは洗練された民芸品の粋を集めて展示即売しているところである。さすがに陶器も格段に良く出来ており、新しい感覚でなおスペインらしさも取り入れてある。牛の陶器製の置物は40センチほどだが、いかにも堂々としており、胴体はモスグリーンの中に黄緑色でレモンのような丸い模様がはいっている。腹から足にかけて皮が貼ってあり、顎をひいて角を前方に突き出している。突進してゆく姿勢である。5800ペセタ、かなり高い。色違いもあった。とても気に入ったが、手が出ない。ティーポットもいいのがあったが、バラでは買えず、5点セットで70000ペセタ以上もするので、話にならない。

 結局、何も買えず。並の土産物店との差が激しい。こちらとしては、もう少し大衆的な値段でありきたりでないものを出せないものかと、思う。ガラス製品、家具、タピストリ、銀器、皮財布を他に置いていた。

 

  レコード屋に入り、フラメンコのカセットを見る。グラナダ はフラメンコで優れていると聞いたためだ。店のおにいちゃんお勧めの、ベスト1を買う。

  まだ、夕食に間があるので商店街をぶらつく。

ある女性向け洋品店では2階でモデルがファッションショーらしきことをしていた。露地からガラス越しによく見える。黒い同じ服で長い間行ったり来たりしていた。これを路地ゆく人たちが下から眺めていた。

 

  ミネラルウォーターをカテドラル近くの食品よろず屋で買う。透明な容器に入りいかにも

水だ。

  疲れているせいか、くるみと仲違いしたまま、8時過ぎ、nuevo restauranteに入る。くるみはプラト コンビナート、セットメニューだ。薫は一品もの、これがここでの最後の食事だ。くるみはマカロネスとポテトフライ、目玉焼き、ハム、フルーツサラダ。フルーツサラダは何故か大盛り。

薫はパエージャと,ソパデ メルルーサ。このスープは水炊きのようにあっさりしており、拍子抜けした。飲み物は飲まず。さっき、路地奥の、bodega castillaでVINOを2杯づつ飲んだからだ。ここは一杯15ペセタととても安く、お金持ちそうでない客も多かった。道路掃除夫の兄ちゃんや、若者、飲助のじいさんなど積極的に身なりの汚い人が多かった。薫に注いでくれた

VINOのコップの周りに白いざらざらが付いているので指摘すると、おっさんは、大丈夫、

大丈夫と言いながら、」コップを洗う粉であることを示して見せた。全然、大丈夫じゃない。

腹くだるあるよ。コップを替えて注いでくれたが、前のはすぐには捨てず、そおーっと手元に下ろした。

  おっさんの洗ったビールジョッキは泡の切れないまま、トントンと置かれたので、ビールを飲まなかったことを喜んだ。タンクは7つも並んでおり、白いチョークで値段が書いてあった。勘定の時の計算用だった。タンクにはcastelloとかVINOの種類が書いてあった。

 柱や壁には絵タイルが嵌めてあり、いちいち年代と名前が入っていた。

左隅には、カナリアが籠に入って吊られていたが、今日は鳴いていなかった。

 薫が飲んだmoscateleは、マスカット酒で飴色をしており、砂糖を焦したような甘さがあった。おやじは自慢そうだ。突き出しはでない。

 

   夜9時過ぎ、HOTEL RISBOAに荷物を取りにゆく。おばさんを呼んで荷物を取り出している時、夜行でマドリッドにゆくと言ったら、すぐさま、11時、と応じた。例の可愛らしい笑顔で見送ってくれた。

  バスで駅に向かったが、運転手が間違えて一つ手前で降ろしたので、たくさん歩くはめになってしまった。疲れてんのに、いい加減にせいよ。

  待合室で坐っていたら、日本人の女の子がふたりいた。

列車のコンパートメントに入ると、おじさんが既に坐っていた。移ろうにも、リザーブ席が多く混んでいるようだった。仕方なく元の席に坐っていると、おっさんが話しかけて来た。ブロークンで話す。マラガのRENFE(鉄道会社)に勤めているそうで、macanico修理工の仕事をしているらしい。68歳だと言うが、定年はないのだろうか。

ここの駅は切符を買うのに時間がかかりすぎる、と言う。頬杖をつく真似をして見せて、(この時、顔は掌でつぶれて、ぶうたれている)のろのろした手捌きをやってみせた。その次、

ハポンと言い、ちゃちゃっと忙しなく切符を配る真似をして対照させていた。実に感じが出ていて面白く大声を出して笑った。しばらくすると、大荷物を持った人たちが乗り込んできて、この部屋も一杯になった。坐って寝る他はない。走り出してからトイレに入りかけたが、何処も閉まっていて開かない。駅員が来るまで開かないというので、ずっと立って待っていた。しびれを切らせて聞きにゆくと,違う方にあると言うので、無事完了。

体を片方に寄せて寝る。

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