10月30日 ご用心ホテル案内

  朝、宿に荷物を置いて靴を見に出かけた。何件か空いている店を見かけたが、どれにするか決めかねていた。昨夜見た比較的気に行ったブーツ(バックスキンハーフブーツ・モスグリーンで折り返しがからし色)の店は見つからなかった。

 

  仕方なく、駅へ引き返す途中、人が結構入っている店があった。若い子向けの靴が多く飾られており、立ち止まって見ているイタリアの女の子もいた。

 

  私たちもブーツを買うつもりだったが、ディスプレイされている一つを気に入り、店に入って試した。この靴は足にぴったりで、はき心地良く、イタリアらしい斬新なデザインがいい。皮も良い皮を使っており、値段も39000リラ。2つほどサイズを試してこれに決めた。

 

  この店は日本の雑誌にも紹介されたことがあると店員が言ったが、なるほど、店は結構流行っていて活気があった。また、店員もきびきびしており、多くの人が試し履きをしていた。しかし、おもしろいことに、この靴の中底には、何のシールも店名・製造元の名の印刷もないことだ。靴底も、スポーツシューズのようにラバーソウルで溝が付いており、とても頑丈な作りで、2人共大層気に入った。これは良い買い物だった。

 

  この後、メインストリート脇のセルフレストランのようなところに入り、開店まで店内で待たせてもらって、スパゲティボンゴレ2つと、ローストビーフ、ワイン小瓶1本を飲食した。あまり安いとは言えないが、税・サービス込みで(スパゲティも柔らかかったが)できたてのあつあつで大盛りだったのがよかった。ワインは少々高め。店員の愛想すこぶるよろしい。薫は、「味の分を愛想でカバーしている」と言った。

 

  宿に荷を取りに帰り、また駅に戻る。ROMA行きに乗る。車内は結構込み合っており、途中でイタリア人一家と合席となる。くるみの横には6~7歳くらいの男の子。薫が指でおもしろい格好をしてみせたのがきっかけで、その男の子と指相撲まですることになった。男の子は嬉々として喜んで何度も挑んできた。そのお礼と思ったのか、打ち解けたためか、自分たちがラッパ飲みしていたミネラルウォーターを飲むか?というので、2人とももらった。これは、炭酸の入ったやつで、ワインを割るのに使うだけでなく、飲料用でもあることがわかった。イタリア語でいろいろ質問された。

 

 

  5:00すぎROMAに着く。くるみ、原因不明だが下痢のため、お腹痛し。(本によると)この街のinfomationには係員が1人しかおらず、そのおっさんも時々逃げ出すという。したがって全くあてにならない。

 

  うろうろしていると、客引きのプレートをつけたおっさんにつかまる。2人で相場20000リラ以上というが、高すぎる、というと、16000リラでダブルはどうか、という。どうしようか迷っていると、横の暗闇からもう1人の痩せた男が現れ、あっという間にそのホテルへ行くことになってしまった。

 

  そのホテルは地球の歩き方にも紹介されていたところで、駅から15分ほど (早足で)歩いたところにある。少し通りから入った住宅地の大きな建物の中だった。入り口のいくつも並んでいるボタンのうちの一つを押すと、インターホンになっていて、話は通じた。重い荷物を担いで、5階ほど上がる。男が、Can I help you?といったが、くるみは断って自分で担いだ。

 

  Hotel(Locanda)の入口では、おばさんが2人の部屋はないとか言っている。しかし、部屋を見させてくれるというので、ついてゆくと、ダブルベットの他に、シングルベッドが2つ置いてあり、さらにもう一つのエキストラベッドをおばはんが出そうとしていた。

 

  ローマはドミトリーが多いらしく、本にも書いてあったし、どうも様子がおかしい(男がおばはんと私たちが直接話すことを避けているようだった)ので、この部屋を2人だけで使っていいのかとおばはんに確かめてみた。あと、3人別の人が来ることがわかり、話が違うので断った。

 

  男は(彼はイタリア人ではなく、ルーマニア人だと言った)「I lost my time,half an hour」とつぶやいて階段を下りていった。私たちだって貴重な時間と体力を消耗したのに!

 

 

 

  駅へ帰りがてら、軒並みペンションに入って値段を聞いたら、相場はツインルーム20000〜22000リラだった。まだ結構空いているようなので、少し安心して駅へ戻り、Barで生オレンジジュースを飲み、また、やすペンションの多い駅の右側へ物色しにいった。

 

  満員のところもあり、あまり安いのがないのとで、2人とも疲れて、路地をさまよっていると、急に小柄なイタリア男が現れて、ホテルを探しているのかと聞く。そうだというと、良いホテルを知っている、1人10000リラというが、もっと安いホテルを探しているんだ、というと、意を決したように1人9000リラ、2人で18000リラといい、とても良い部屋だからぜひ見せてくれをいうので入っていった。

 

  この男は、ホテルのオーナーだとかいうが、とても調子のよさそうによく喋る男だ。ペンションは1ヶ月前にオープンしたばかりで新しいというので、よく見たら古い建物に真白のペンキが塗ってあり、それが突き当たりで途切れて、元の壁の色が出ていた。部屋にはベッドが4つ、病院の死体安置所のように置かれてあり、カーテンも家具も何もなかった。2人だけで使わせてくれるというのと、まあ清潔そうなので、決めた。奥さんは若く、北欧系美人。この人を見て、安心して決めたのかもしれない。とにかく、シャワーも使えるというし、良かったと思った。

 

 

  今日はラーメンにしようと、外へ買い物に出たが、どこも閉まっており、結局駅の前の果物屋(露店)でりんごを2つ買い、パイナップル1切れ食べて帰ってきた。この店に『KAKI』という名前で柿が売っていた。

 

  宿に戻り、ラーメンを作ろうとしたが、コンセントに電気が通っておらず、何も作れないので、近くのトラットリーアへ。混んでいて、30分ほど待った挙句、やっと席につけた。この店は、イタリア人よりもドイツ・アメリカなどの白人が多い。「やっぱり地元の人が来てる所の方がいいね」と薫が言う。くるみもそう思う。

  ドイツ人・アメリカ人は外国で見ると、何かと尊大で横柄に見える。ウェイターのおっさんやおかみを必死で呼び止めて注文し、空腹を満たした。ここのローストチキンは3000リラで美味。スパゲティも茹で方に気を使っているが、量はやや不足。coperto,servisio含めて、13420リラの散財。

 

  あーあ。宿に戻ってもお茶も沸かせないので、薫は非常に怒っていた。「地球の歩き方になんか載せてやるか」と。シャワーもくるみが使ったあと、温水が出ず、早々に寝た。