10月26日 クレー美術館in bern

  予定通り8:00に起きて、レマン湖のほとりを散策にゆく。途中、ハポン人らしき人物を見かける。湖には、ヨットがたくさん停泊していて、その間を大きな白鳥がたくさん浮かんでいた。黒い鳥や白いカモメやすずめやかもや、いろんなのがごちゃまぜになってパンくずを漁っていた。レマン湖は霧(あるいは朝もや)で霞んでいて、全貌が見渡せなかった。どこでもそうだが、あまり大きなものを近視眼的に近寄って見すぎると味気がないものだ。レマン湖も遠くから眺めやる方がいいらしい。

 

  散歩の帰りに旨そうなパン屋があったので、フランスパンの太いの(2.1F)とチョコミルク、それとカスタードクリームのたっぷり入ったドーナツを買って帰った。これは、どれもとても旨かった。ドーナツはカスタードクリームが溢れそうだし、特にフランスパンは外側がパリッと香ばしく焼けていて、中は食パンよりも柔らかくきめが細かい。薫はほこほこ顔で喜んで、旨い旨いを連発。たぶん今まで食べてパンのうちのベスト1だと思う。皮の香ばしさがチーズスプレッドとよく合ってさらに美味しさを引き立てる。お腹いっぱいの朝食だった。

 

  10:32発の列車に乗るために、心臓がはちきれそうにむちゅになって駅に着くと、どこからか民族音楽を奏でる笛の音がした。てっきりレコードだと思っていたら、駅構内の地下道で東南アジア系の人が吹いているのだった。アップテンポのもの哀しい旋律の曲で、構内の音響効果もプラスして、何だかとても迫力があった。あまりに上手なので、薫は0.1Fをあげに行った。通る人々もこれはためらいもなく、お金を次々と入れていた。こんなに魅きつけられるのは珍しい。

 

  電車を遅らせて聴くつもりでいたが、結局間に合ってしまって、ICの1等に乗ってしまった。ずいぶんとガラ空きの列車だった。1両に乗っているのは私達の他に1人だけ。この列車の内装は色も形もすっきりとまとまり、窓も大きく、スイスの山や谷合いの風景が実に良く見えるが、困ったことにいつかの列車と同じように枕が飛び出ている形であった。これは肩が凝る。

 

  レマン湖が見えた。もう霧は晴れていて、向こうにアルプスの山が見えた。湖の向こうい突然遠近感のわからぬくらいの高さでにょっとあらわれた。この山は少し豪快で合った、起伏の多い牧場の風景が続く。

 

 

  ベルンへは、12:00過ぎに着。ここも首都だけあって賑やかな都会だ。荷物をロッカーに預けて、美術館が開く2:00までの間、駅の周りをうろつく。野菜や果物、花を売る店屋が多く露店を出していて、活気があった。道路(広場)の真ん中の空き地では、地面に描いたチェス盤で、男の人2人が真剣に勝負をしていた。周りにも見物人。

  ここでもやはり食べ物屋は高く、肉屋と惣菜屋をやっている見せてホットドッグを2つ買った(各2F)。そのあと、もっと大きなソーセージが食べたく、3.3Fもするドックを買ったが、これはお肉の感じがそのまま残っている美味しいソーセージだった。朝食のチョコミルクの残りとフランスパンでお腹を満たし、クレーの美術館へ向かった。

  警備員(係員)がいつ見てもジロッとこちらを見る美術館だった。クレーは、500点と書いてあったが、全部は展示されておらず、残念だった。絵はやっぱりポスターと色も感じも違った。あとで絵はがきや案内所を見たが、やはり、実物の感じは伝えにくいものだ。

  急につまらん話だが、薫はここにあるオッペンハイマーの彫刻が気に入った。薫によると、ここの絵はどれも質の高い感じがしたとのこと。私は、クレーのペン画など、珍しく面白いと思った。この後、1FのPaul Sennの写真展を見た。点数も多く、良かった。この写真集は日本では絶版で、手に入らないものだという。訂正、世界でも絶版とのことだ。つまり非常に珍しくかつ貴重なものであるということを力説され、ついにくるみも承諾してしまった。(このために、またTCをスイスフランに換えねばならなくなったが) 彼は若くして天才扱いされたが、30過ぎてアルコール中毒で気違いになって

死んだ。

  ああ、高いものを買ってしまった。でも、薫はもう、イタリアでは靴を買わないから、と言った。よく覚えておこうと思う。

 

  自然博物館では古代から現代に至る世界各地の様々な動物、昆虫、石などを展示してある。徹底しているのですごかった。

  Youth Hostelでは、係のおばさんは忙しそうだった。心なしかアラブ系有色人種のかたまり(団体)が多いようだった。彼らは先ほどまで、アフリカではなく、民族音楽のようなリズムを(机などで)打ち鳴らしながら、騒いでいた。ここはインドか!スイスに雰囲気まるでなし。あるとすれば、この建物が山小屋風造りであることだけ。夕食は6Fで、本に載っていたほど十分ではなかった。しかし、外で食べるよりは安いのが取り柄だ。コーヒーも妙だった。

  食後、荷物を取りに駅にゆき、1.5Fのビールを飲む。ここはおっさんの酔っ払いが多い。

  もうそろそろ10:00なので、みなぱらぱらと散ってゆく。追い出されぬうちに退散。